最近CSで、『鬼平犯科帳』 (八代目松本幸四郎主演)を観ています。時代劇専門チャンネルで、日曜日の午前に放送されています(再放送あり)。このドラマと関連したネタですが、このドラマについては以前取り上げたことがあります。
今年は蚊帳を買おうかと思う(鬼平犯科帳の最初のテレビドラマを見ていてそう思った)で、これは『鬼平』に限らず、時代劇、あるいは任侠ものなどではおなじみの設定ですが、よくあるパターンで、かつての悪人が(理由はともかく)足を洗ったにもかかわらず、昔の仲間などが誘いに来て、これまた理由はともかく断りきれずにまた悪事に手を染めてしまうというものです。たとえば先日(9月25日。10月24日に再放送予定)放送していた第2シリーズ第6話では、殿山泰司が、そのような(元)悪党を演じていました。
もちろんこれはフィクションですが、たぶんドラマを観ている人たちは、みなこう思うはず。
「馬鹿だな。断ればいいのに」
断らないのは、そうしないと話が成立しないからですが、しかしそういうことが確かにあるということも事実でしょう。人間1度そのようなことにかかわると、やはりなかなか足を抜けないところがある。
そしてそれは、もちろん誘う側がしつこく誘うのも事実ですが、1度それをやってしまうと、やる側も精神的なハードル、抵抗がはなはだしく低くなるというのも事実かと思います。多分ですが、世の中、非合法のものはもちろんのこと、半合法、合法でもいろいろなリスクがあることというのは、最初の一歩は怖いが、1度やってしまうとかなり精神の抵抗は低くなるというところがあるのでしょう。
犯罪というのも、性犯罪などはそうではないでしょうか。いわゆる強制性交とか暴行といったような重大犯罪はもちろん、盗撮や痴漢のような条例レベルの事件でも、そういうことがあるでしょう。性犯罪というのも依存すると思われますが、私が何回もご紹介している性犯罪を繰り返ししてしまっている人物たちも、おそらく生まれて初めての性犯罪よりは、2回目以降の犯罪の方がはるかに精神的に抵抗が少ないでしょう。これは、これまたいろいろ依存が指摘されている万引きなどもそうではないか。生まれて初めてする万引きと、2度目以降の万引きとでは、おそらくその人の精神のなかでの位置づけは、まるで違うでしょう。
世の中犯罪者が再犯をするというのは、もちろん様々な理由があるわけですが、おそらく再犯をする人物はすでにそのことへの抵抗がなくなってきているという側面が大きいでしょう。性犯罪も、万引きも、その他の犯罪も、たぶん最初の犯行はもちろん依存ではありませんし、2度目もさすがに依存ではないでしょうが、精神的な抵抗がどんどんなくなってきて、その結果が依存症という精神状況ではないかと思います。
さて酒とか煙草、ギャンブルなどは、国によっては違法のところもありますが、日本国では制限付き合法、ギャンブルについては、違法だが法令で許す範囲で合法というものかと思います。酒・煙草は年齢制限があり、ギャンブルは原則違法で法令でOKの部分で許される(ただし年齢制限あり)というものです。つまりは「半合法」とでもいうものでしょう。そしておそらく多くの人は、これを初めてやるときは、それ相応の抵抗があるはずです。低いか高いかはともかく、まったく精神的なハードルがないというものでもないでしょう。
またこれは合法ですが、「投資」などもそういうところがないか。日本政府や自治体も、酒や煙草、中央競馬に公営ギャンブルほかをどんどんやって、国や自治体に税金や売り上げをどんどん納めてくれなんてことは少なくとも積極的には言っていないと思いますし(今はどうだか知りませんが、昔は自治体などでは、地元で煙草を買って税を地元に落とそうみたいな標語のステッカーを煙草屋ほか煙草を売る店で設置していました)、警察だって、パチンコをどんどんやって我々の天下り先を充実させてくださいなんて(もちろん)言っていませんが、投資についてはやたら推奨しています。しかし投資も、生まれて初めてやるというのはやっぱり怖いですよね。しかし1度やれば、だいぶそういった精神的ハードルが低くなるはず。
で、これはおそらく学校や職場でのいじめ(という言葉では済まなくなることも多い)、家庭でのDV、その他粗暴行為や車などの乱暴な運転などもそういうところがないか。世の中やってはいけないこと(法律的にも道義の点でも)をやったり、それなりのリスクのある行為をするということは、精神的な慣れがあり、そこから場合によっては依存症の道に進むのではないかと、素人考えながら想像するわけです。
おそらく懲役を繰り返すというのもそういうことでしょう。犯罪に対する抵抗がはなはだしく低くなっていることと、刑務所に入所することへの抵抗も低くなっている。刑務所くらいしかその人の居場所がないというのも、このこととパラレルでしょう。こうなるとまったくもって救いようがない。
いや、もっと極端な例でいえば、シリアルキラーなんてのもそうでしょう。連中だって、最初の1人を殺す際は、それ以降よりは精神的な抵抗はあったでしょう。それとは次元が違う話をすれば、たとえばAV出演とまではいわずとも、映画などでヌードシーンを演じるなんてのも、やはり似たようなところはあるでしょう。
そう考えると、やはり少年非行に限りませんが、最初がやはり非常に肝心ですね。最初で終わればいいが、終わらないと依存症になるまでよろしくないことを続けるということになりかねない。子育てなどをするうえでも、さすがに自分の子どもみ積極的に非行に走ってほしいと考える親は多くはないでしょうが、最初で火を消さないと非常に危険です。少年非行なら、まともな親がいれば注意してくれますが、成人以降の犯罪だと、いまさら注意してくれる人がいるかも問題です。
いずれにせよ精神的にハードルが低いうちに、よろしくない行動はやめた方がよいということです。進むとろくなことがない。私も気を付けますので、読者の皆様も、ご自身だけでなく周囲にも気を配ってください。よろしくお願いします。