不祥事を起こしたプロ野球の選手といえば、有名どころを上げれば覚醒剤取締法違反で逮捕され実刑となった江夏豊、彼と比べればだいぶ選手としての格は低いですが、喫煙や道路交通法違反などを繰り返した相内誠、ひき逃げで逮捕された前川勝彦(Wikipediaによると、最近の消息は報じられていないとのこと。なかなかぶっ飛んだ人間だったようです。Wikipediaに、
>オフの12月1日に設定された契約更改交渉を「11月31日と勘違い」して無断欠席したことがある。
というエピソードが紹介されています)、道交法違反、児童買春、詐欺と窃盗で逮捕と、悪事のオンパレードという感のある奥浪鏡などがいますが、重罪という点では、この人が抜きんでています。なにしろ無期懲役の判決を受けてしまったわけですから。これより上ですと死刑しかないので、さすがにそこまで悪質な人間は今後も出ないのではないか。ロッテ・オリオンズで速球派投手として活躍した小川博です。
先日彼についてちょっと調べようとネットをあさっていましたら、今年の2月に彼について特集したテレビ番組があったことを知りました。当然私はその番組を見ていないのですが、番組の内容を要約した記事を見つけましたのでご紹介します。
>小川博受刑者 プロ野球選手から強盗殺人犯に 獄中から知人へ手紙「なぜあんなことをしてしまったのか」
[ 2022年2月22日 22:54 ]
日本テレビの「ザ!世界仰天ニュース」(火曜後9・00)が22日に放送され、元ロッテ投手で2004年に犯した強盗殺人の罪で無期懲役となり、現在服役中の小川博受刑者(59)について扱った。
小川受刑者は高校時代に3度の甲子園出場を果たし、大学を経て1984年ドラフト2位でロッテ入り。甘いマスクで高校時代から人気があり、プロ野球でも88年にオールスター出場、リーグ最多のシーズン204奪三振と結果も残しつつあった。だが、銀座のクラブ通いなど派手な生活を送り、金遣いが荒かったところ、右肩を痛めた時期にチームメートに誘われて行った気晴らしのギャンブルにはまり、それをきっかけに転落が始まった。
引退後には年俸700万円でコーチの職につき、この時点では住宅ローンが1000万円残っているだけだったが、浮気もあって当時の妻と離婚すると、離婚の2カ月後にはクラブで知り合った女性と再婚。2人の子供も授かった。だが、前妻への慰謝料や前妻との子供の養育費に加えて派手な生活をやめることができずに球団内でも借金を重ね、母に預けてあったプロ入り時の契約金4200万円もすべて使い果たした。それでも妻にさえ見栄を張って借金があることを言えず、40歳で球団を解雇された時には消費者金融などからの借金が1700万円に。自己破産して一度は清算したものの、これを機に妻がお金の管理をするようになり自由に使える金がなくなると、当時就職していた会社の慰労会用にと渡されていた10万円のうち3万円を私的に流用した。この3万円を妻に言えず、すでに自己破産していて消費者金融では借りることができないため法外な利子を取るいわゆる“闇金”で借金するようになった。
(中略)
結局、小川受刑者は“闇金”での借金を別の“闇金”で借りて返すことを繰り返すようになり、元金10万円に1週間で3万円の利子がつくことも。母親に内緒で実家を担保に借金したほか、借金を返すはずの借金をパチンコで使ってしまうなど悪循環。最後は利息3万円を含む4万3000円を“闇金”業者に支払う期限の午後7時まで40分に迫ったところで会社の会長宅に押しかけ、家政婦に4万円の借金を断られると暴力をふるって気絶させ、その間に175万円を盗む犯行に。さらに気絶している家政婦の女性を車に乗せ、気がつきそうになると何度も殴った末に川へ遺棄するに至った。
犯罪心理学の専門家は「現実を検討する能力が著しく劣る」とこういった犯罪者の共通ポイントを明かし「前に栄華を感じてしまったり、すごいとほめられてしまったり。(今の自分は)そんなことない、現状はこういうところに来ているのにまだそのギャップが自分の中で埋められない」と分析した。また、小川受刑者が獄中から知人宛てに送った手紙の中身も公開され、そこには面会に来てくれた母親について「久しぶりに会う母は私の前では気丈に振るまっていましたが、顔にしわが増え、老いた様子でした。私が犯罪者になったことにより母には寂しい思いをさせてしまっています」などと後悔がつづられ「父が建てたあの家。今の私にはあそこしか帰る場所がありません」「一瞬の迷いとはいえ、いま思えばなぜあんなことをしてしまったのかと後悔の念です」「日々、事件で亡くなられた被害者の冥福を祈っています」などとも書かれていた。
引用文中、番組MCやゲストのコメントの段落は省略しました。
非常に興味深いところが多いですね。私が印象に残ったところがこちら。
>犯罪心理学の専門家は「現実を検討する能力が著しく劣る」とこういった犯罪者の共通ポイントを明かし「前に栄華を感じてしまったり、すごいとほめられてしまったり。(今の自分は)そんなことない、現状はこういうところに来ているのにまだそのギャップが自分の中で埋められない」と分析した。
これ、私が繰り返し拙ブログでとりあげる佐藤忠志氏そのものという感がありますね。
佐藤氏は、自宅をリバースモーゲージのような形で売却して、その金である1億円の現金(と称していました)で高級車を購入してしまいました。さすがにこれは奥さんとの関係を決定的に悪くし、奥さんが家を出て行くという事態になったわけです。
さすがにそれはひどすぎるんじゃないのと私でなくても思うでしょうが、たぶん彼のこの奇行(と言っていいでしょう)の原因のひとつが、上の犯罪心理学専門家の方がいう
>現実を検討する能力が著しく劣る
>前に栄華を感じてしまったり、すごいとほめられてしまったり。(今の自分は)そんなことない、現状はこういうところに来ているのにまだそのギャップが自分の中で埋められない
ということなんでしょうねえ。佐藤氏が、自民党から参議院選挙の比例代表で出馬したり(2001年)、あまり関係があるわけでもない自治体である鹿児島県の西之表市長(種子島)選挙に出馬(2009年)した背景にも、自己認識と世間での評価のギャップを埋めようという思惑を感じないでもありません。それが選挙に出るという選択になったのは、どちらの選挙も惨敗といった状況であり、その後の彼の人生を考えると、最悪の選択だったという気がします。おそらく彼の人生に最終的にとどめを刺したと思える1億円での高級車購入も、ギャップを埋めるための最終手段ではなかったか。自分は現在でもこんなにすごい車に乗れるんだぜとでもいうような。さすがに凡人はそこまで無茶なことはしないしできませんが、おそらくかなり極端な発達障害の持ち主で、これもおそらく過度の飲酒で前頭葉が委縮するなどの認知症の症状があった可能性がある佐藤氏は、その時点では購買の意志を撤回することができなかったのでしょう。これでは、廃人一直線ということになってしまいます。
ところで小川受刑者ですが、上の記事ではそれは書かれていませんが、どうも彼のプロ野球入りには、彼のご両親(養父母とのこと)はだいぶ反対したようですね。そして、上の記事によると、養父母は、彼の契約金を使わないで取っておいたらしい。それらの事情、理由は定かでありませんが、おそらく養父母は、小川受刑者の人間性というものをだいぶ疑っていた、彼に対して相当厳しい評価をしていたんじゃないんですかね。プロ野球などに入って、なまじ金が入ったりすると、勘違いして墓穴を掘ると考えていたのではないか。そうでないかもしれませんが、その可能性は高いと思います。そして結果的には、彼はプロ野球などに入らないほうがよかったという事態になってしまったわけです。
それにしても小川受刑者の言葉
>一瞬の迷いとはいえ、いま思えばなぜあんなことをしてしまったのかと後悔の念です
ってのもねえ(呆れ)。そういえば佐藤氏も、奥さんから逃げられた後
>こうなったのも全部オレが悪いから仕方ないよな
とよく語っていたらしい。お二方とも
「そりゃそうでしょ」
「あったりまえじゃん」
「なにをいまさら」
というレベルの話でしかありませんが、でもお2人とも、強盗殺人をしたとき、高級車の購入を強行したときは、そんなことは頭の片隅にもなかったんでしょうね。まさに
>現実を検討する能力が著しく劣る
とはこのことです。
さて、佐藤氏については、彼がギャンブルをしていたという情報は、私は耳にしていませんが、小川受刑者はねえ、かなりのギャンブル依存症だったように思えます。
>右肩を痛めた時期にチームメートに誘われて行った気晴らしのギャンブルにはまり
>借金を返すはずの借金をパチンコで使ってしまうなど悪循環
というわけです。さらに、こういう心理も、この種の犯罪をする人間にありがちなものですね。
>妻にさえ見栄を張って借金があることを言えず
>当時就職していた会社の慰労会用にと渡されていた10万円のうち3万円を私的に流用した。この3万円を妻に言えず
いや、そんなことを黙っているような段階じゃないだろと思うし、むしろ逃げちゃうほうがまだましだろと思いますが、そういうものででもないのでしょうね。たとえば
浪費をする人間というのは、想像以上にひどいでご紹介した件(宇都宮宝石店放火殺人事件)では、判決文から引用すれば、
>被告人はその後仕事もないのに愛人との関係を続けていたことから,またしてもサラ金に手を出し,再び300万円以上の借金を負うこととなった。被告人は,前回のサラ金騒動の際に,離婚の危機に直面し,2度とサラ金に手を出さないよう言われていたことから,今回のサラ金への借金が発覚すれば離婚は免れず,家庭が崩壊することになると恐れた。
というわけです。その後この犯人は、宝石店でガソリンをまいて放火して、6名を焼殺、めでたく死刑となっています。この死刑囚もまた、
>現実を検討する能力が著しく劣る
なのでしょう。ご当人が死刑になるくらいなら、家庭が崩壊するほうがよっぽどましというものでしょう。同じく放火殺人である夕張保険金殺人事件の暴力団組長である犯人夫婦、武富士弘前支店強盗殺人・放火事件の犯人であるタクシー運転手なども同じようなものなのでしょう。なお両事件とも、夕張の暴力団夫婦もタクシー運転手も死刑が確定し執行済みです。
もちろん犯罪者である小川受刑者ほからと、ご当人は否定しているとはいえDVで逮捕されたくらいの前歴である佐藤氏とではまた話は違いますが、しかし人間性ほかについては、相当に共通するものがありそうですね。ほぼアウトローの人生しか送っていないと思われる夕張の夫婦はともかく、ほかの人たちは、さすがに「殺人」となると、本来そこまで大それたことをする人たちではないと思います。どこかで極端に狂ったのでしょう。そして、
>現実を検討する能力が著しく劣る
人間というのは、そのように狂いやすい傾向があるのでしょう。たぶん私の母の知り合いだった、歌手崩れに貢いで全財産を失った女性、キャバクラ嬢に横領した金を渡したゴム会社社員、母親に金を横領させて豪遊した息子(もちろん母親もご同様)も、似たようなものだと思います。まさに
>現実を検討する能力が著しく劣る
です。
「勧進帳」「大本営発表」「キャバクラの女への横領した金のつぎ込み」みたいなものだ 金をためられる人、財産を残せる人は、けっきょく金にシビアなのだと思う(追記あり) 社会常識、道理、正論、合理的解釈、法令順守、他人に迷惑をかけない、こういったことが通用しないと本当に迷惑だしどうしようもない(2)