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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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知的障害あるいは精神障害のある人物の行動を管理あるいは抑制するのは、いろいろ困難が多いことを痛感する

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産経新聞より。産経も、こういうまともな記事を出してくれればいいんですがね。

わずかな隙に失踪…支援なき知的障害者の家族 安全か自由か「正解」見つからず
2023/4/25 20:36

目を離した隙に、わが子がどこかへ行ってしまうことがある。知的障害のある子供の一時的失踪-。山中に迷い込んだり交通事故に遭ったり、中には命を落とす子もいる。親たちにとっては切実な問題だが、行政による当事者への実態調査や包括的な支援はほとんど行われていない。「家族だけでは限界」。そんな苦悩もまた、ほぼ知られていないのが現状だ。

ガチャ、ガチャ…。深夜、自宅玄関のドアノブを回す音がする。布団から跳ね起き、あわてて駆け付ける。奈良県内の養護学校に通う長女(17)が外に出ようとするのを止めなければならない。

長女が突然失踪したのは昨年11月30日のこと。連れだって出かけた大阪・難波の地下街で、50代の父親がATMを操作しているわずか20秒の間に、いなくなってしまったのだ。

周囲を捜したが見つからず、父親は大阪府警に届け出た。そこから直線距離で約13・5キロ、堺市のコンビニエンスストアで見つかったのは約33時間が経過した翌日の夜。電車を乗り継いであちこちを移動し、どうにかコンビニにたどり着いたとみられる。

今年1月には家から約2キロ離れた交差点で車にはねられ、一時意識不明の重体となった。両親は位置情報が分かる衛星利用測位システム(GPS)端末を、娘に持たせることも考えた。だが、どこかに置いていってしまったり、着用タイプのものでも違和感を覚えて取り外してしまったりする可能性があり、実効性が見込めなかった。

50代の母親は「長年家族で話し合ってきたが、できるのは注意して見守ることぐらいだった」と明かす。最近、長女が自力で開けられないように玄関のドアの鍵を増設した

(後略)

後半もいろいろ興味深い記述が多いので、ぜひ読んでください。詳細については直接お読みいただくとして、障害者の子どもが突然行方不明になって死体で発見されるという事態が紹介されています。

認知症のご老人が行方不明になるというのはちょいちょい報道されますが、知的障害や精神障害があると、やはり突然行方不明になったりします。記事でも、

>大阪府吹田市の放課後等デイサービス施設では昨年12月、車から降りた特別支援学校の男子生徒=当時(13)=が突然走り出して行方が分からなくなり、1週間後に近くの川で遺体で発見された。

本来なら職員2人がつきそうところを1人しかつけておらず、施設は今年4月から3カ月間、新規利用者の受け入れ停止という行政処分を受けた。

市によると、死亡した男子生徒は水に強い興味があったといい、川に入って溺れたとみられる。担当者は「さまざまな障害特性の人がいるので、それに合わせた対策を取る必要がある」とする。

という事例が紹介されています。

そしてこれは、自分が行方不明になるという事例ですが、これが知的障害者の重大犯罪となると、かなりやばい話になります。こちらの事例はどうか。

「障害があれば何をやっても許されるのか」娘を殺害された母の悲痛と、5年越しの判決

詳細についてはこれも記事を読んでいただくとして、この被告人は、

今から5年前、2018年2月に事件は起きた。

13日、愛媛県今治市の会社敷地内から、運送会社に勤めていた、当時30歳の女性の遺体が見つかった。乱暴された痕跡が残る体には、首を手で絞められた跡、さらに被害者が着用していたタイツが首に巻き付けられていた。

翌日、同僚の男が殺人容疑で逮捕された。
西原崇被告、当時34歳。
犯行当日の夜、西原被告と被害者の女性は2人きりで仕事をしていた。被害者とは10日前に知り合ったばかりだったが、西原被告は一方的に好意を寄せていた。

職場での様子を知る関係者は、西原被告が被害者の女性と2人きりで仕事することに「異様に興奮していた」と振り返る。

◇◇「犯行当時の精神年齢は9歳」無罪主張

同年3月7日、松山地検は殺人と強制わいせつ致死の罪で西原被告を起訴。
10月16日に松山地裁で始まった裁判員裁判の初公判で、西原被告は起訴内容を否認した。

弁護側は、殺意を否定した上で、「西原被告には軽度の知的障害があり、犯行当時の精神年齢は9歳程度だった」「ストレスなどで行動をコントロールできず、犯行当時の記憶も失っていた」「精神障害の影響で心身喪失状態だった」として、無罪を主張。

とあり、松山地裁は無期懲役の求刑に対して懲役19年を判決、検察被告双方が控訴し、高松高裁は地裁への差し戻しとし、最終的に地裁での再審理が確定、無期懲役の判決となり、現在被告側による再度の控訴中です。2度目の地裁における被告人の母親の証言を。

母親は、事件当時に西原被告が両親と3人で暮らしていたこと、元来、人と話すことが苦手でコミュニケーションがうまくいかないことが多かったこと、仲の良い友人はいなかったことなど、西原被告の人間関係を問う弁護士に答えた。

性格について聞かれると、注意をした際に急に興奮することがあり、特に女性のかん高い声や怒った声に反応することが多く、自身も尻を「けつられた(=けられた)」ことがあったと証言。10年ほど前には、西原被告から受けた暴力が原因で病院を受診したことがあったと振り返る。

被害者への弁償について問われる。
少し落ち着きを取り戻していた西原被告の母親のおえつが、再び高まる。
用意した弁償金は300万円という。
「はした金かもしれないが、遺族に対して精一杯かき集めた」と声を絞り出す。
その上で「被害者の家族に申し訳ない、したことを一生償って欲しい」と西原被告への思いを述べた。

続いて検察官から、なぜこれまでの裁判の傍聴をしなかったのか問われると「申し訳なくて、見ていられなかった」と回答。
夫は過去に傍聴をしていたものの、辛さに耐えられなくなり、裁判の途中で退席したことなどを挙げた。

さらに被告人の証言を。

「小学生のころの記憶はない」
「中学生のころ、学校に友人はおらず、弟とは週に2、3回遊んでいた」

人と話すことが得意ではなく、また人に話したいと思うこともなかったと証言する西原被告。中学時代には、テレビゲームやサイクリングに興味を示したと話す。一方で、この頃、線路への置石などの問題行為もあったという。

その後の、5年間にわたる障害者福祉施設での生活の中でも、話すことのできる友人はできなかったと振り返る。この施設からは、脱走して退所した。

社会人になってからは、職を転々としてきたと話す。
「怒るとセーブが効かなくなる性格」が災いして、人間関係のトラブルが絶えなかった。友人ができることはなく、女性との交際経験もない。

この記事を読んでいて、私はかつての記事を思い出しました。

行政その他の支援がなかったことが非常に悪い事態をもたらした大きな要因と思われる強盗殺人事件の実例

中度の知的障害者が2人の老女を殺害して金を奪い、死刑が確定した事件です。なおこの記事を書いている現在、執行はされていません。こちらによれば、地裁では

>窃盗事件を繰り返していた藤崎被告が成人後の大半を刑務所で過ごしたことに触れ、「十分な矯正教育を受けたにもかかわらず、規範意識は著しく鈍く、犯罪性向はより深化している」と述べた。

という判決だったようですが、はたしてその「矯正教育」は十分なものといえたのか、そもそもご当人に矯正教育を受けてそれを受け入れるだけの能力があったのか、そもそもご当人が一人暮らしをする能力があったのか。どれもきわめて怪しいとしかいいようがないのではないか。

愛媛の事件は、孤独を強いられたこの死刑囚よりは、はるかに恵まれた家庭環境にある人物による犯行でしたが、ともかく女性を殺してしまうという最悪の結果になってしまったわけです。フィクションですが、なんとなく私は、これをも思い出してしまいました。

二十日鼠と人間』。映画もあります。1992年の『二十日鼠と人間』では、ゲイリー・シニーズが主人公、女性を殺してしまった知的障害者をジョン・マルコヴィッチが演じていました。1939年の映画では、主人公をバージェス・メレディス、知的障害者をロン・チェイニー・ジュニアが演じていました。フィクションと現実ではまた違いますが、まったく違う状況だったということもないでしょう。

それにしても、犯罪ではありませんが、自殺のような問題もどうか。こちらの記事を。

抗議声明・東京入管に収容されたイタリア人男性の自殺を受けて

一部抜粋して引用します。

確認または推定される事実   1  スタフィッソさんは2005年1月に来日後、東京都福生市に住所を構えて、継続的に在留していた。  2008年12月には日本人と結婚したので、それからの在留資格は「日本人の配偶者等」だったと思われる。

2  本人の証言によれば、2020年8月ごろ、スタフィッソさんは福生警察署に逮捕され、21日後の9月11日に身柄を解放された(不起訴または起訴猶予か)。  おそらくこの日以降、かれの法的地位は仮放免であった。  この日に撮られたという、かれが寝間着のような姿で品川駅構内に立つ写真が遺されている。  その後、かれは福生市の自宅に戻ったが、しかしすでにアパートの鍵は交換されており、つまりアパートから追い出されており、室内の所持品も何者かにより撤去されてしまったという。

3  2020年9月11日から2022年11月ごろまでの二年あまりのあいだ、スタフィッソさんはずっとホームレスの状態にあったようだ。  本人によれば2021年7月以降、かれは福生市の河川敷(橋の下)で生活していた。  その様子などを撮影した動画を、かれはウェブ上にアップしている。  最後の動画は2020年10月20日付である。  その後、おそらく11月にかれは東京入管に収容され、11月18日に収容施設内で凄惨な自殺を遂げた。

4  遅くとも2020年9月11日までに、スタフィッソさんは在留資格を失った。  配偶者との離婚が原因ではないと思われる。  というのも、その数か月前には、スタフィッソは在留資格を「永住」に切り替える申請をおこなっており、また配偶者もこの申請に配偶者として協力しているからである。  しかし、配偶者および入管当局とのあいだに問題を抱えていたことは確かだ。  本人の証言によれば、配偶者とかのじょの勤務する企業は、スタフィッソさんの年金を、長年にわたり、また配偶者であるかれ自身の要請にもかかわらず、納付していなかった。  このことや、それに関連するいくつかの手続上の「問題」が、かれの在留資格の更新不許可と関連しているのではないかと思われる。  ――それが本当に長期在留の移民から在留資格をはく奪する(おそらく更新不許可)に値するほどの「問題」であるかどうかは別として。

5  本人証言によればスタフィッソさんは、この件をめぐるイタリア大使館の対応に不満があったようであり、イタリア当局からの庇護を求めるという趣旨で、入管当局に難民認定申請をしている。  イタリア大使館が手配した医師に精神疾患と診断されたことが、かれの不満の大きな一因となったようだ。  診断そのものは妥当なのかもしれないが、しかしこの診断のせいで、自分の主張が一切まともに扱われないのだとスタフィッソさんが考えたとしても不思議ではない。  かれの証言や主張には、思い込みや誇張も含まれてはいるだろうが、しかし基本的には事実を伝えていることを疑う理由はない。   入管他に問題がないとはもちろん言いませんが、ご当人がもっとまともな精神状態であるならさすがにここまでひどい結末にはならなかったでしょう。イタリアに送還できればそれで話がすんだし、それまで日本政府なりなんなりが保護できれば良かったのですが、法律が悪いのか個々の役人のやる気がないのか、法や制度の運用に問題があったのか、ともかく自殺という事態になりました。件の人物は相当に精神状態が悪かったのでしょうが、こういうことについてはやはりもっと早い段階で適切な治療をするに限りますね。が、ご当人がそれを拒否するとなると、事態は非常に悪くなる。かつて私も、どう考えても精神疾患である人物が堂々と   >私自身、よくこんな状態で発狂もせずに生き続けているなと思います。   >不思議なことに自殺する気が起こらず発狂もしていきません。   と述べているのを読んで、ほとほと呆れ返ったこともあります。だいたいこの人は、

>近畿大学教授時代にハラスがひどかったわけですが、一年間の休職期間中に近大医学部人見教授に一年間診療していただきました。先生は近大医学部の精神科の主任教授です。

とまで書いており、つまりは自分でも、精神科への通院を認めているわけであり、それなら精神に何らかの問題があるわけですが、ご当人はそうは考えていないということでしょう。そして理由はわかりませんが、通院をやめてしまったらしい。病識がなかったのかもですが、どっちにしたってこれでは治癒もしくは病状の改善などありそうにありません。お話にもなりません。

どうもねえ(2) 書いていて実にうれしくないことになりますが、ともかく知的障害者や精神障害者(あるいはそれを併発している人物)の行動を抑制するのは、なかなか問題が多いですね。最悪愛媛や茨城の事件のような殺人も起きる。本当に困ったものです。   なおイタリア人の自殺については、bogus-simotukareさんがご紹介してくださった高世仁の記事から知りましたことを明記して記事を終えます。ありがとうございます(と今回は、高世にも礼を述べます)。   珍右翼・高世仁に突っ込む(2023年3/7日分)(副題:ホームレスにはやはり精神疾患者が多いらしい)   外国人ホームレスを生む「仮放免」制度

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