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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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今日でチリ・クーデターから50年(同時多発テロからは22年)

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本日2023年9月11日は、チリ・クーデターが起きて50年です。多くの人間にとっては、アメリカ同時多発テロ事件があった日というイメージが強いかもしれません。

チリ・クーデターは、露骨に米国が介入したクーデターとして知られます。Wikipediaにも、

世界で初めて社会主義政権アジェンデ大統領の人民連合政権)が、自由選挙によって民主的に選出されたにもかかわらず、武力で打倒して新自由主義的な経済政策を押し付けるべく、米国政府米国多国籍企業シカゴ学派経済学者チリ軍部を裏で操った。

とあるくらいです。「シカゴ学派経済学者」ってのがすごいですが、ジョージ・スティグラーミルトン・フリードマンらのことです。連中は、これもWikipediaから引用すれば、

数理経済学的手法よりも実証経済学的手法を重視する傾向が強かった(実証主義

というわけで、その理論をまさにチリで実証したわけです。いうほど成功はしなかったようですが。

しかしともかく、チリ・クーデターというのは、その後の米国のイラクアフガニスタン戦争、そしてロシアのウクライナ戦争とも共通するものがあるわけです。また、チリでの米国とチリ政府の無法ぶりというのも、たとえば日本共産党の「敵の出方論」などにも影響をおそらくは及ぼしたのでしょう。ところで私が複数の記事で批判した本多勝一氏のルーズヴェルト陰謀論(真珠湾攻撃陰謀説)も、チリ・クーデターのようなマジの陰謀・謀略への怒りが、へんてこな方向にゆがんだものなのかもですね。ちょうどこの時期彼は、南北ベトナムを取材していた時期であり、また米国も取材しているから、さらに怒りが増幅したのかもしれない。これはちょっと後でまた話がつながります。

この人たち(本多勝一氏と進藤栄一氏)大丈夫かと本気で思った(デマ本を真に受けて、ルーズヴェルト陰謀論を本気で信じている馬鹿な人たち) 妙な陰謀論やトンデモ科学にはまると、なかなか逃れられない(ルーズヴェルト陰謀論についての入門書を読んで勉強したい)(追記あり)

真珠湾とチリへの右翼クーデター支援では、規模も理由も異なるし、どっちみち同一視できはしませんが、ほかにもいろいろなことが彼の眼を曇らせたのでしょう。それはそれで困ったものです。

話を戻します。このチリ・クーデターの件では、アジェンデ大統領が大統領官邸で自殺し、また多数の進歩人士が連行・虐殺もされました。有名どころでは、歌手のビクトル・ハラが殺害され、パブロ・ネルーダもひどい扱いを受けて亡くなりました。毒殺説もあります。外国人でも殺害されたとされる人物がいるくらいです。「ミッシング」は、チリで行方不明になった息子(夫)をさがす政治的には保守的な男性とその奥さんの話です。実際このクーデターは、世界中に「そこまでするか」という驚きもあり、いろいろとそれを題材にした作品もあるわけです。Wikipediaのこちらをご参照ください。日本でも、五木寛之戒厳令の夜』やその映画化された「戒厳令の夜」などは有名かと思います。チリ・クーデターの際の暗号を題名にした「サンチャゴに雨が降る」も有名な映画です。

で、このような露骨な米国の対外干渉は、けっきょくこの28年後の同日におきた同時多発テロにもつながるかと思います。チリ・クーデターだけの問題ではありませんが、このようなめちゃくちゃな内政干渉や、地元政府の暴虐ぶりへの見て見ぬふりの態度の集積が、同時多発テロの大きな要因であることを否定することはできないでしょう。同時多発テロは、アラブ・イスラムの系統の事件とされますので、もちろんラテンアメリカが舞台であるチリ・クーデターとは系統が違いますが、けっきょく米国のいう「民主主義」というのは、「我々が認める民主主義」でしかなかったわけです。だから、たとえば私の過去記事を引用すれば、

>朴大統領暗殺事件や光州事件時の米国大統領だったジミー・カーターは「人権外交」なるものを標榜していましたが、Wikiepdiaのその項でも指摘されているように、

>>表向きは人権外交を標榜するカーターであったが、アメリカにとって都合のいい同盟国の人権抑圧に対しては無関心であった。

と評されても仕方ないところでした。ただ「対中韓政策」という項では、

>>韓国政府が朴正煕の軍事独裁である点や、極秘裏に核兵器開発計画を進めていたこともあって、朴政権との関係は険悪だったとされる

という指摘もされています。しかしけっきょくカーターは、光州事件は大目に見たわけです。そういうようなことは、まさに冷戦時代、北朝鮮との激しい対立を前提とするものであり、現代の社会ではとても通用するようなものではありません。そういったことを理解しないほどの荒木だって馬鹿でも非常識でもないでしょうに。そしてさすがに金大中事件などというものは、日米両政府だってとても許容できるようなものではありませんでした。

というわけです。けっきょくカーターは、理由はともかく光州事件での暴虐は見て見ぬふりをしたことは記憶にとどめないといけません。そういえば金大中事件は、チリ・クーデターの直前である1973年8月8日に発生しました。詳細は不明ですが、この時はさすがに米国と日本両政府が大慌てで介入し事なきを得ましたが、つまりはそれは、金大中氏が利用価値のある人物とみなされていたということであり、そうでなければ抹殺されていたでしょう。ニクソンはそういう人間でしょう。いずれにせよカーターですらこの程度なのだから、他の大統領はもっとひどいでしょう。これではまったくどうしようもない。実際最近でも、2020年1月に、イスラム革命防衛隊ガーセム・ソレイマーニー(ほかに複数の表記あり。この記事では、Wikipediaにのっとります)氏を暗殺した過去があるくらいですからね(バグダード国際空港攻撃事件 (2020年)参照)。それは前政権(トランプ政権)の時代であり、現バイデン政権は現状そこまで無茶はしていませんが、といって現政権も別にイランにこの件で陳謝したわけでもない。さすがにここまでの無法というか、すごいことは、ひところのイスラエルくらいしかしないのではないか。イスラエルだって、最近は軍事バランスの変化もあり、そんなにすごいことはしなくなっています。それだけイスラエルが強国になり国際的な立場も確立したということですが、米国はまさに「一強」とまで言われるくらいの力が(まだ)あり、それでむちゃくちゃするのだから、お話にもならないとはこのことです。

チリ・クーデターから50年たち、いろいろ変わった部分も大きいですが、もちろんその狂気を米国は保持し続けてもいます。これらは、私たちとも無縁でもありません。いろいろ注視していきたいところです。なおこの記事は、bogus-simotukareさんの記事に啓発され、またその見解を参考にしました。感謝を申し上げます。

新刊紹介:「経済」2023年10月号(その2:チリクーデター50年)(2023年8月13日に記載)

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