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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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北朝鮮の小説が翻訳されているので、読んでみたい

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本日は、「書評ほか書籍関係」のカテゴリーもありですが、「北朝鮮・拉致問題」とします。gooは、カテゴリーを1つしか設定できないのでこの辺り不都合なところがあります。

こんなしらじらしいことを堂々と警察に言われて、拉致被害者家族会はよく怒らないものだ

この記事に、bogus-simotukareさんからコメントをいただきました。以下、コメントの引用部分については、青で表示します。

小学館が北朝鮮の小説を刊行 (bogus-simotukare)2023-12-08 07:13:56山梨日日新聞【時の人】和田とも美さん~北朝鮮文学作品の日本語出版を翻訳(有料記事で全く読めません)
https://www.sannichi.co.jp/article/2023/07/06/80484416
毎日新聞『特集ワイド:「つまらない」北朝鮮文学を邦訳した研究者 南北分断期、埋めなくては 』(有料記事で途中までしか読めません)
 北朝鮮で生きる人々の暮らしを描いた文学作品「友」の邦訳が今春、出版された。時代は、国民生活をなおざりにしてミサイル・核開発に突き進む前の1980年代。
 筆者は1949年生まれの白南龍(ペク・ナムリョン)で、訳書は今年3月に小学館から出版された。南北分断後に生まれた北朝鮮在住の作家の文学作品が日本の出版社から出されるのは極めて異例という。
(引用終わり)

 著者の白ですがウィキペディアによると
>1977年、慈江道作家同盟の職業作家になった。1987年、朝鮮作家同盟の召喚を受けて平壌に移り、「4·15文学創作団」と呼ばれる作家のエリート集団に加わった。長編小説『復興』(2020年9月)は金正恩の業績と偉大さを描く叢書「不滅の旅程」の第一巻
ということで「体制側か反体制側か」で言えば「北朝鮮の体制側」ですね。今回翻訳された小説も「内容が優れているかどうか」「体制礼賛かどうか」はともかく体制批判ではないのでしょう。
 翻訳者の和田とも美氏は富山大准教授で、『李光洙長篇小説研究』(2012年、御茶の水書房)の著書があります。
 それにしても「文芸分門(今回、翻訳刊行)とはセクションが違う」のでしょうが「反北朝鮮の右翼雑誌」サピオの版元「小学館」が刊行とは意外です。
 まあ小学館と言えば、過去にも、不破哲三『歴史教科書と日本の戦争』(2002年)なども刊行していますが。
 しかし、これは「小泉訪朝直後」だと救う会や家族会、産経などが「北朝鮮の職業作家の作品を翻訳するとは何事だ」と小学館や和田氏を非難し「刊行するな」と言ってたんでしょうかね?。
 拉致の風化を象徴する出来事と言えるかもしれない。

>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)2023-12-08 19:16:04情報ありがとうございます。この小説は面白そうですね。内容はつまらなくても、北朝鮮で書かれた小説というのは、他の芸術作品もふくめてなかなか外に出ない、映画などが多少は出るくらいかと思うので、これは私も読んでみたいですね。土日は旅行の記事を出す日なので、来週の平日にこの件で記事にしてみたいと思います。

毎日新聞の記事はこちら。bogus-simotukareさんが省略した引用の続きを、可能な範囲で引用しますと、

圧政下のソ連時代、同時代人を勇気づけた抵抗の地下文学があったが、北朝鮮にはないのだろうか。そんな疑問を私は長らく持っていた。「友」は地下文学ではないが、80年代の地方都市に暮らす市民が描かれている。結婚生活に葛藤を抱えて生きる2組の夫婦が登場。家庭での悩みが丁寧に記され、私は興味深く読んだ。「党が打ち立てた崇高な目的のために」などというセリフを読むと眉をひそめてしまうが、ミサイル報道だけでは分か…

とあります。このコメントを読んで、これは興味深いと思いました。で、この本が地元の図書館に入っていたので、さっそく取り寄せました。

この本に関しては、訳者も

訳者の富山大学准教授、和田とも美さん(53)に評価を聞くと、「つまらない」とキッパリと答えた。

と言っているくらいなので、いわゆる俗的な意味でも、芸術的な意味合いでも、あまり面白いというものではないようです。つまり小説の出来という意味合いでなく、その本からうかがえる北朝鮮社会のさまざまな本音や実態を知るということが興味深いというところでしょう。

それで、上のコメントの返しで私は、

情報ありがとうございます。この小説は面白そうですね。内容はつまらなくても、北朝鮮で書かれた小説というのは、他の芸術作品もふくめてなかなか外に出ない、映画などが多少は出るくらいかと思うので、これは私も読んでみたいですね。土日は旅行の記事を出す日なので、来週の平日にこの件で記事にしてみたいと思います。

と書きました。それで、この記事を書いているわけです。

北朝鮮制作の映画で一番有名なのは、やはり『プルガサリ 伝説の大怪獣』ですかね。この映画は、日本人のスーツアクターやスタッフも参加しています。中野昭慶薩摩剣八郎など知名度の高い人もメンバーです。スーツアクターの薩摩氏などは、この件で著書も著しているくらいです。Wikipediaにも、実は「朝鮮民主主義人民共和国の映画‎ 」という項目があります。このような本も出版されています。

朝鮮民主主義人民共和国映画史―建国から現在までの全記録

映画は多少なりとも日本でも公開されているとして、小説となると、おそらく多くの人は、読むとしても、小説そのものの面白さなどは大して興味はないでしょう。小説の中から、どれくらい北朝鮮の社会を読み取れるか、あるいは徹底的に体制の庇護のもとの小説になるか。どうであるかは読んで自分で判断するとして、けっきょく北朝鮮の芸術というのをどう評価するというのもいろいろ興味深いですね。読んでみて、面白ければ記事にします。ちょっと記事にする気もしなければしょうがありませんが、プロパガンダ芸術とばかり馬鹿にしてもよくないでしょう。たとえば旧ソ連では、ボリス・パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』が1957年に発表され、翌年パステルナークはノーベル文学賞を受賞しましたが、政府から辞退しろと迫られてそうすることを余儀なくされました。ただしノーベル賞委員会は、この辞退を認めず、一方的に賞を送っています。

また前にこんな記事を書きました。

ノーベル文学賞を全受賞者の作品を1冊は読むことにしたい(手始めに、2011年以降の受賞者から読んでいきたい)

で、私は、詳細は省略しますが、2012年にノーベル文学賞を受賞した莫言の『』という小説を読みました。莫言という人物は、Wikiediaによれば、

いっぽう、莫言は中華人民共和国検閲中国のネット検閲グレート・ファイアウォール)を容認するなど「体制側の作家」との批判を受けており

とありまして、中国政府に対する反抗心が強い人間ではないようですが、私が読んだ上の本は、やはり文革から改革開放の時代への移行などが著者の自伝風に語られていて(もちろんいろいろフィクションは入っています)面白かったですね。おそらく今回翻訳された小説の著者は、ノーベル文学賞などかすりもしないでしょうし、比較するのもおこがましいでしょうが、それはそれとしてともかく読んでみます。読めばいろいろな発見もあるはず。で、この小説は、Amazonから引用すれば、

北朝鮮の市井の人々が描かれた文学を読む

北朝鮮の市井の人々を描いた作品。

1988年に北朝鮮で刊行され、後に韓国で出版。さらにフランス、アメリカでも翻訳出版された。
アメリカの「ライブラリー・ジャーナル」で、2020年のBest Books翻訳文学部門の10冊に選出。

離婚を望む歌手である妻と、寡黙な技術者の夫。そして、その離婚の審議に当たる判事と、野菜の研究者として生きる妻。二組の夫婦の姿を軸に、地方都市の情景や、そこに生きる人々の心情を描く。

「北朝鮮の人が読む北朝鮮の文学とは何か?
1988年に出版されたペク・ナムリョンの小説『友』は、“北朝鮮”という言葉から思い浮かべるロケット弾や軍事パレードではなく、日常を呈している。〈中略〉
小説は、投機的なニュースよりも恒久的な事実を提供するかもしれない」
――― New York Times Book Reviewより

とあります。つまりは世界で英語とフランス語で翻訳されているわけで、訳者も、そういった一定の評価にのっとってこの本を翻訳した(そして小学館も出版に踏み切った)ということでしょう。いろいろ興味深いというものです。


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