Quantcast
Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

「飯塚事件」についてのドキュメンタリー映画が公開される(この事件もかなりやばい段階に来たのではないか)

$
0
0

いわゆる「飯塚事件」に関する映画が公開されます。記事を。


福岡・飯塚事件のその後を追ったNHKのドキュメンタリー番組「正義の行方」が映画化
2024年2月5日 12:00 429 34
映画ナタリー編集部

2022年にNHKのBS1スペシャルで放送された3部作のドキュメンタリー番組「正義の行方~飯塚事件30年後の迷宮~」が、「正義の行方」のタイトルで映画化されることが決定。4月27日より東京・ユーロスペースほか全国で順次公開される。

1992年に福岡・飯塚市で2人の女児が殺害された飯塚事件。DNA型鑑定などによって犯人とされた久間三千年は2008年に死刑を執行されたが、冤罪を訴える再審請求が提起され、事件の余波は今も続いている。木寺一孝が監督を務めた本作では、弁護士、警察官、新聞記者といった異なる立場の当事者たちが語る“真実”と“正義”を通して事件を多面的に捉え、司法の姿を浮き彫りにしていく。

本作のもとになった番組は、第77回文化庁芸術祭のテレビドキュメンタリー部門で大賞、2022年度のギャラクシー賞で選奨作品に選ばれた。このたびYouTubeで解禁された特報映像には、「証拠はでっちあげでしょう」「犯人に間違いありません」という異なる証言が映し出される。広大な雑木林を収めたメインビジュアルには「これは私たちの『羅生門』」というコピーが添えられた。

「A」「福田村事件」の森達也は、本作について「ここ数年、いや間違いなくもっと長いスパンにおいて、これほどに完成度が高く、そして強く問題を提起するドキュメンタリーは他にない」と絶賛する。木寺は「是非、自分の眼で“真実”とは何かを探ってみてください」とつづった。プロデューサー・東野真のコメントは下記の通り。

森達也 コメント
観ているあいだ、自分は今、とんでもない作品を観ているとの意識が、ずっと身体の内奥で駆動し続けていた。ここ数年、いや間違いなくもっと長いスパンにおいて、これほどに完成度が高く、そして強く問題を提起するドキュメンタリーは他にない。

木寺一孝 コメント
異例の早さで死刑執行された人物は真犯人だったのか。いったい何が真実で、何が正義なのか…。この作品がこだわったのは、弁護士・元警察官・新聞記者という事件の当事者それぞれが信じる〈真実〉と〈正義〉です。立場の異なる人たちの考えを多角的に構成し、三者がぶつかり合う様子をありのままに提示したいと考えました。是非、自分の眼で“真実”とは何かを探ってみてください。

東野真 コメント
テレビ版をご覧いただいた方から「あの番組の登場人物、俳優が演じているわけじゃないですよね?」と聞かれることがある。もちろん冗談まじりだ。職業が顔を作るという言い方があるが、警察官、弁護士、新聞記者それぞれみな「いかにも」と思わせる風貌と語り口なのだ。彼らが自らのキャリアを賭けて語るそれぞれの「正義」にぜひ耳を傾けていただきたい。気がつくと飯塚事件のこと、そしてこの国の司法のことが頭から離れなくなるはずだ。

日本のこの種のドキュメントは、外国のとくらべて生ぬるくてあんまり面白くないのですが、これはなかなか面白そうですね。なおポスターに『羅生門』とありますが、これは小説でなく映画の方ですね。映画の原作は、『藪の中』です。それで先日こんな記事が公開されました。


飯塚事件 2度目の再審申し立て非公開審理終了 4月以降に決定か
2024年2月16日 7時19分 

32年前、福岡県飯塚市で小学生の女の子2人が殺害されたいわゆる「飯塚事件」で、すでに死刑が執行された元死刑囚の家族が裁判のやり直しを求めている2度目の申し立ては、15日で非公開の審理が終了し、弁護団によりますと裁判所は再審を認めるかどうかの決定を、ことし4月以降に出す見通しを明らかにしたということです。

1992年、福岡県飯塚市で小学1年生の女の子2人が登校途中に連れ去られ、遺体で見つかったいわゆる「飯塚事件」では、殺人などの罪に問われ、一貫して無罪を主張していた久間三千年元死刑囚(70)の死刑が確定し、2008年に執行されました。

元死刑囚の家族は3年前の7月、再審=裁判のやり直しを求める2度目の申し立てを行っています。

弁護団によりますとこれまでの非公開の審理で
▽事件当日、元死刑囚の車と似た軽乗用車を元死刑囚ではない男が運転し、後部座席に2人の女の子が乗っているのを目撃したという、男性への証人尋問に加え
▽確定した判決で事件当日、最後に女の子2人を見たとされている女性の証人尋問が行われたということです。

この中で女性は当時、警察官の誘導などによって記憶と異なる調書が作成されたなどと証言したということです。

弁護団は当時の女性の証言には信用性がないことを明らかに示す、新たな証拠にあたると主張しています。

弁護団によりますと審理は15日ですべて終わり、福岡地方裁判所は、再審を認めるかどうかの決定をことし4月以降に出す見通しを明らかにしたということです。

弁護士「真実が見えてきた」 
弁護団の徳田靖之弁護士は「久間さんを犯人とする1審判決の証拠構造は総崩れになっていると考えて、きょうは審理趣旨の説明を行いました。証人尋問などが行われ、真実が見えてきたと感じています」と話していました。

私見では、この事件かなりやばい段階に来ているような気がしますね。DNA鑑定もろくにあてにならず、目撃証言も怪しいとなると、かなりやばそうです。で、すでに死刑は執行されていますからね。日本の行政や司法は、当分死刑を廃止する気はないでしょうから、執行済み死刑囚の再審なんて容易に認めないと思いますが、しかしWikipediaイギリスにおける死刑廃止によれば、英国における死刑廃止の大きな原動力になったのが、冤罪あるいは証拠が必ずしも十分でない事件による死刑執行でした。エヴァンス事件A6殺人事件など。前者は冤罪であるとされ、後者はのちにDNA鑑定がされ、処刑されたのが真犯人であることが確定したとのこと。なお私は、前者は知っていましたが、後者は、このWikipediaを読んで初めて知りました。なお英国での最後の死刑執行は1964年、65年に死刑執行を5年間猶予することとなり、69年に本土で廃止、北アイルランドでも73年に廃止になっています。98年に最終的に全面廃止となりました。ほかにチャンネル諸島では法律上2006年まで死刑制度があり(ただし執行の事例はなし)、マン島では1993年に廃止となりましたが、執行ははるか以前にされない状態でした。

で、日本でも飯塚事件が今後の日本の死刑執行における相当な障壁になる可能性がありますね。そういう事態を避けるために日本の裁判所も法務省も検察庁も、再審は絶対阻止の姿勢で行くのでしょうが、この事件は死刑の執行も、DNA鑑定がやばそうだというので執行を急いだというのがもっぱらの噂であり、となるとこれは死刑制度への重大な疑問ということになりそうです。すくなくとも執行時点では証拠不十分の誹りが起きりそうなわけで、そして現段階起きているわけです。

こんなことを書くのもなんですが、死刑賛成派こそが、死刑の判決や執行については、最大限の厳格さをもって対応しなければいけません。英国の死刑制度はそれの不備で崩れました。私は死刑反対論者ですので、もちろん死刑判決にも執行にも反対ですが、賛成派は、別の理由で絶対死刑の冤罪判決や冤罪執行を否定しなければいけません。が、この飯塚事件は、明らかに検察といい法務省といい(裁判所もそうでしょうが、ここではあえて論じないこととします)悪手を放ったように思います。日本人の人権意識などがいろいろ発達している昨今では、昔と比べてもはるかに冤罪死刑というものに対する国民の意見は厳しくなっているはず。1952年に事件が発生して57年に死刑が確定、62年に死刑が執行された藤本事件などよりはるかに国民の非難は強いでしょう。藤本事件では、ハンセン病患者への差別が指摘されています。なお藤本事件(別名・菊池事件。藤本は被告人の名前、菊池は事件の起きた土地の名前)については、熊本県も、HPにその関係のものを出しているくらいです。狭山事件では、石川一雄氏は死刑から無期懲役に減刑されましたが、冤罪の可能性が高いといわざるを得ない事件で執行された事件もあるわけです。

だいぶ話が映画とは違う段階になりましたが、今回証言した女性に対しては、捜査をしている段階で警察がかなり執拗に警察に都合のいいことを話すよう仕向けたらしい。検察は、それを(当然)否定しますが、いずれにせよ死刑というまさに文字通り「極刑」に処すにしては、相当むりやりだよなあです。まさに現在再審中の袴田事件や再審請求中である名張毒ぶどう酒事件のようないかがわしさがありそうです。

4月に再審の可否が出るそうです。たぶんどのような結果が出ても抗告になり高裁でまた審理されると思います。私も今後の動向を注視したいと思います。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>