本多勝一著「「真珠湾」からイラクまで― アメリカ式謀略戦争の実体」という本を読んでいまして、「?」というところがありました。
>
〈コラム〉マッカーサー元帥の善意、実は対外債務(p.144)
というところです。つまりは、マッカーサーが戦後日本に食糧支援をしたのは、単なる善意ではなく、対外債務であとで元利の返済を求められたということを本多氏は指摘されています。Wikipediaガリオア資金には、
>
当初日本はアメリカによる無償援助とみなしていたが、アメリカが返済を求めたため、1962年(昭和37年)に約4億9000万ドルの返済協定を調印し、のち完済した。
とあります(注釈の番号は削除)。
で、これは同じ本で本多氏が開陳する真珠湾陰謀論(Wikipediaでは「真珠湾攻撃陰謀説」)とちがい、事実関係は間違っている話ではありません。それはわかるのですが、ただそれ日本人が言うと「どうもなあ」のところがあります。日本は、中国などで徹底的に様々なものを収奪したし、そうしなければ戦争なんぞできませんでした。
でですよ、これは独ソ戦もご同様。こちらもドイツは、旧ソ連ほかから様々なものを徹底収奪しました。これもそうしなければ、戦争なぞできなかったわけです。
さてさてそれは戦争中の話ではありますが、いちおう休戦なり終戦なりになったとして、日本やドイツに、中国なり旧ソ連なりに、米国が日本やドイツなどに行ったような規模の食糧支援をする用意があったのかです。なかったんじゃないんですかね。戦争の遂行に夢中であって、そんなものをする意思もろくになかったし、またそれだけの国力もなかったのではないか。けっきょくこれは、相手国で行う戦争とそうでない場所での戦争(もちろん爆撃を受けたりドイツは全土が、日本も沖縄ほかで地上戦があったりしたわけです)の違いもありますが、どちらにせよ日中戦争とか独ソ戦などの際の日本軍やドイツ軍の乱暴狼藉ぶりというのはすさまじいものがあり、あそこまでひどいことは、米国はしていないでしょう。これは米国をほめているわけではありませんが(日本やドイツがひどすぎただけです)、いちおう客観的事実ではあるでしょう。
そしてこれは全くの別件ですが、このような問題はどうですかね。
核搭載米艦、寄港容認の密約経緯 60年安保改定時、米公文書に明記
bogusu-simotukareさんから下の拙記事にコメントをいただきました件です。記事を引用します。
米兵を起訴するのは、法相が指揮をすることらしい(それじゃ、検察だって、起訴なんかしたいわけがない)>
核搭載米艦、寄港容認の密約経緯 60年安保改定時、米公文書に明記
編集委員・藤田直央2024年5月18日 21時30分
1960年の日米安全保障条約改定をめぐる交渉で、核兵器を積んだ米軍艦の日本寄港を事前協議なく認める密約を両政府が交わしていたことを示す米公文書が見つかった。この密約を日本政府は認めていないが、さらなる検証が必要なことを示す発見だ。
核持ち込み密約、認めなかった日本と米に残る公文書 政府の説明は
文書は1958~60年の条約改定交渉に関する二十数点。信夫(しのぶ)隆司・日本大学名誉教授(日米外交史)が、米国の国立公文書館やNPOの国家安全保障公文書館(NSA)で2004年以降に入手し、精査した。
岸信介首相は1958年2月、領海を含め日本に核兵器を持ち込ませないと国会で答弁したが、米政府は核搭載艦が自由に寄港できる環境を維持しようとした。
一連の米公文書によると米国務省は58年9月、マッカーサー駐日大使に、条約改定で新たに設ける事前協議制度について訓令を出した。核兵器の日本領土への配置は事前協議の対象とする一方で、「核搭載艦の日本の領海、港への立ち入りは過去同様に続き、事前協議の対象にならないとの確認を求める」よう指示する内容だった。
以下有料部分です。
記事に出てくる信夫隆司氏は、前記事でも貴重な史料を発見された方です。それで、こちらでは、米公文書館など公の施設でそういった資料を発見されていますが、前記事の方では、
>
都内の古本屋から規程を収蔵した検察資料冊子を入手
というわけです。日本におけるこの種の開示状況がいかにひどいかです。つまりこの冊子を所持していた法務省官僚(検事)が亡くなり、それがある程度のタイムラグをへて古書店に出回ったということでしょう。で、こんなのは、税金で国家を賄っているのだから、当然国民の前に提示すべきです。軍事機密でも何でもないものです。ただ単に「格好がつかない」「これでは日本はまともな独立国ではないなどといわれる」とかで隠されているだけです。
>
処分請訓規程は1948年に作られ改正を繰り返してきた。過去に野党が国会で開示を求めたが、法務省は応じなかった。
というわけで、日本の民主主義がいかにひどいかです。で、こういうのは、その他さまざまな密約などでもあるわけで、全くもってお話にもなりません。記事のコメントでbogus-simotukareさんは、
>
しかし「密約を全て隠し続ける日本」と「一部に留まるとは言え、後に公開する米国」、後者の方が「いくらかマシ」ですね。
ということになるでしょう。くりかえしますと、まったくもってお話にもならない。
そうなると、こういうあたりを総合的に考えれば、やっぱり少なくとも民主主義とかそういう観点では、日本より米国の方がまともでしょうね。貧富の差や人種差別、銃などの問題、犯罪など米国のよろしからぬ部分はいろいろありますが、少なくとも行政への監視とかなどの民主主義の基礎的な部分では、日本が学ぶ点多数でしょう。たとえば今年アカデミー作品賞を受賞した『オッペンハイマー』のような映画を製作してまたそれが大ヒットするだけの国が米国です。米国を批判するにしても、そういったところは評価したうえで批判をするべきだと思います。
やはり今年のアカデミー賞は、『オッペンハイマー』が受賞したなお冒頭でご紹介した本多勝一氏の本の中で、彼の真珠湾陰謀論を批判したくだりは、こちらの記事をご参照ください。またコメントをくださったbogus-simotukareさんに感謝をいたします。また氏のこの件に言及されているブログ記事もご紹介します。
この人たち(本多勝一氏と進藤栄一氏)大丈夫かと本気で思った(デマ本を真に受けて、ルーズヴェルト陰謀論を本気で信じている馬鹿な人たち) 妙な陰謀論やトンデモ科学にはまると、なかなか逃れられない(ルーズヴェルト陰謀論についての入門書を読んで勉強したい)(追記あり) 珍右翼・高世仁にコメントする(2024年5/20日分)