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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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そんなに危険なら、組み体操なんかやめてしまえばいいと思う

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こちらの記事を読んで驚きました。はてなブックマークでも、たくさんのブックマークがされています。

>「組み体操」事故で後遺症20件

9月22日 15時22分  

各地で運動会や体育祭のシーズンを迎えていますが、多くの学校で行われている子どもたちが積み上がる「組み体操」による事故で後遺症が残ったケースが10年間で20件に上ることが名古屋大学の調査で明らかになりました。
専門家は「組み体操は最近、巨大化しているが、子どもの安全を最優先で対応を考えてほしい」と注意を呼びかけています。

この調査は名古屋大学教育学部の内田良准教授が日本スポーツ振興センターの資料を基にまとめたものです。
それによりますと、平成24年度の1年間に全国の小学校でけが人が出た組み体操の事故は6533件に上り、とび箱とバスケットボールに次いで3番目に多くなっていました。
さらに平成24年度までの10年間に組み体操で後遺症が残った事故を調べたところ、20件に上りました。
中には、ピラミッドのように積み上がった子どもたちが途中で崩れ、一番上にいた子どもの膝が一番下の子どもの腰に当たって、脊柱に障害が残った事故なども報告されています。
ことし5月には、熊本県内の中学校で生徒140人が参加して10段のピラミッドを作る練習をしていたところ、バランスが崩れて上の段の生徒が転落し、一番下の段にいた生徒が腰の骨を折る大けがをした事故も起きています。
内田准教授の試算では、10段のピラミッドを作ると、一番下の段の子どもには最大で4人分に近い体重がかかるということです。
内田准教授は「組み体操中の事故は頭や首、背骨などに関係するケースが多く、かなり重い障害が残っている。今は、組み体操が巨大化し、アクロバティックになっているが、リスクがかなり高まるので、子どもたちの安全を最優先で対応を考えてほしい」と話しています。

記事中「名古屋大学の調査」というところで、「もしや」と思ったら、そうでした。今回の調査をしているのは、

>名古屋大学教育学部の内田良准教授

です。内田氏は、以前私が書評をした「柔道事故」の著者です。

柔道が危険なスポーツなのではない、日本の柔道が危険なのだ

関係ない話ですが、この記事も発表したのが、昨年の9月21日でちょうど1年たったんですね。さいわいといっていいのか、多くの読者に読んでいただき、はてなブックマークもたくさんいただきました。

私も小学生のころ、この種の組み体操(人間ピラミッド)のたぐいをしたことがあります。それで、間にいる馬鹿が下にいる生徒に悪戯をして非常に危険だったことがあります。その際はさすがに事故などはありませんでしたが、しかし崩れたら危険です。で、そういう危険を少しは考えてほしい、って考えているのでしょうが、しかし部活における柔道の事故などと同様、どうもこういった危険に無頓着ですよね。はてなブックマークにも、

zakkie 音楽付けたり、巨大化した組立体操は教師と親のエゴ。なんで去年より豪華にしようと思うのか。曲に合わせるなんて事故の温床。/教育効果の高い種目なので適正な指導を確立してほしい。

shigeto2006 内田良氏が取り組んできた「組み体操」の問題がNHKでも報道されたというのは、画期的なことだろう。こんなものは子どもの人権侵害でしかないので、これ以上被害者が出る前に止めてほしい

yasugoro_2012 そういえば、中3の時に自分も組体操の「飛行機」で上から落っことされ、後頭部を強打して気づいたら病院のベッドの上だったということがあった。

yas-mal 後遺症20件(死者は0?)か…。こんにゃくゼリー(13年間で死者22件)との反応の温度差が興味深い。(骨折など重篤でない事故もあるので一概に比較は難しいけど)

shiroikona333 これ放送見てたけど「こうやれば安定して怪我しない」「十分に注意して行って」とか言っててびっくりした。そうじゃなくてやめればいいじゃん。

uturi   “1年間に全国の小学校でけが人が出た組み体操の事故は6533件に上り、とび箱とバスケットボールに次いで3番目に多く”ひどいな。『学生が無駄な苦労をすることを賛美』という文化があるから放置された結果か

hahiho 柔道は馬鹿が調子乗って素人虐めするのを阻止できるなら容認する余地があるが、30人31脚と人間ピラミッドは各個人の判断で危険回避する余地が全くないので子供にやらせるもんじゃないと思う。

など、いろいろ興味深い意見が紹介されています。

たしかに日本の小学校の運動会って、最近の運動会については詳しくありませんが、伝統的にはマスゲームめいたものとか入場行進とか好きですよねえ。こちらのbogus-simotukareさんのご意見を。

bogus-simotukare 昔の運動会って(日本は元ナチ同盟国なのに)ためらいもなく「ナチス式敬礼」を来賓にやってたし、体育会系は感覚が古いんじゃないかと思う。

 かつては国体ですらやっていましたからね。これは今はやっていないと思いますけど。

それにしても、学校というのも生徒の自殺とかでいろいろ学校のほか教育委員会が批判、非難されたりしますけど、柔道事故といいこの組み体操といい、こういった、やろうと思えばすぐに対策が取れてしかも効果が大きいものに対する取り組みが非常にのろいですよね。いじめの問題などは、言うまでもなく根絶とかは難しいし、もぐら叩きのようにどんどん出てきますが、柔道やこの件のような部活動、体育授業、学校行事に関することなどは基本的に学校側が主体的に行うものですから、基本的に生徒が行ういじめなどより学校なり教育委員会、あるいは文部科学省その他による対応はずっとしやすいし効果も直接役立ちます。そういったことがなかなか進まないのは「大人の事情」かなにか知りませんが、態度が非常に他人事というかやる気がないんですかね。

hahiho 柔道は馬鹿が調子乗って素人虐めするのを阻止できるなら容認する余地があるが、30人31脚と人間ピラミッドは各個人の判断で危険回避する余地が全くないので子供にやらせるもんじゃないと思う。

 というご指摘も考えさせられますね。柔道に関しては、エホバの証人の生徒が高専で格技の授業(この件では剣道)を拒否して留年処分・退学処分になったのは、裁量権の逸脱であり憲法の信教の自由を侵害する行為かが争われた有名な訴訟があります(憲法学の教科書にも出てくるものです)。つまりこの訴訟の最高裁の判決では、

>所論は、神戸高専においては代替措置を採るにつき実際的な障害があったという。しかし、信仰上の理由に基づく格技の履修拒否に対して代替措置を採っている学校も現にあるというのであり、他の学生に不公平感を生じさせないような適切な方法、態様による代替措置を採ることは可能であると考えられる。また、履修拒否が信仰上の理由に基づくものかどうかは外形的事情の調査によって容易に明らかになるであろうし、信仰上の理由に仮託して履修拒否をしようという者が多数に上るとも考え難いところである。さらに、代替措置を採ることによって神戸高専における教育秩序を維持することができないとか、学校全体の運営に看過することができない重大な支障を生ずるおそれがあったとは認められないとした原審の認定判断も是認することができる。そうすると、代替措置を採ることが実際上不可能であったということはできない。

としています。これは宗教上の拒否という特異な理由によるものですが、30人31脚や人間ピラミッドを小学生が拒否するのはより困難かもしれませんね。それこそそれだけで仲間はずれの対象になるということも考えられる、教師だっていい顔をしないでしょう。

上に引用させていただいた

shiroikona333  これ放送見てたけど「こうやれば安定して怪我しない」「十分に注意して行って」とか言っててびっくりした。そうじゃなくてやめればいいじゃん。

というのを読むと(私は、このニュース自体は見ていませんが)、えー、こういうのって続けることをそこまで固執するほどのものなのかい、っていう気がします。後遺症の残るほどの怪我が生徒にでたら、そのような競技あるいはゲームのたぐいは、禁止するかあるいは少なくとも中止するか、最低でも実行するために最大限の安全を確保することを努力するべきものであって、

>こうやれば安定して怪我しない

というのはまだしも(しかし、完全に防げるっていうものなんですかね? そうは思えませんけど)、

>十分に注意して行って

というのは、そんなアドバイス何の役に立たないじゃんと思います。注意したって駄目な場合は多々あるし、また小学生、あるいは教員たちにそれを事故がないように注意あるいは監視を徹底させるというのも現実問題としてできない相談でしょう。なんで

>子どもの安全を最優先で対応を考えてほしい

程度のことができないんですかね。これじゃあほかも推して知るべしのたぐいでしょう。いずれにせよ困ったものです。

だいたいこのような問題は、体育の専門家、あるいは体育教育の専門家がより積極的に警鐘を提起すべきではと思います。人間の命に関わることなのだから、それくらいのことはちゃんとしてほしいというもです。

と、ここまで書いた後で、当の内田准教授の「リスク・リポート」というサイトを知りました。またニュース記事にもなっていますね。一応削除後のことも考えて、魚拓を残しておきます(魚拓1魚拓2)「リスク・リポート」は読んでみて、もしかしたらその感想を記した記事を書きたいと思います。ただ、そのサイトの中で「これはひどい」と思ったくだりがあるので、それを引用してこの記事を終えます。こういうものを読んでいると、組み体操というものは、なるほど、続けることをそこまで固執するほどのものなのだ(と関係者が考えるものだ)ということがよくわかります。太字は元のサイトのままです。

>「自分の子どもがかつて小学生のときに、人間ピラミッドの頂点から地上に墜落して重傷を負い、数ヶ月間の絶対安静を強いられました」というのである。

これだけでも重大な事態であるが、その保護者が嘆き強調したのは、事故そのものとは別のことであった。「それだけの重大事故があったにもかかわらず、学校はその翌年も同じようにピラミッドをつくりました。信じられないことだと思い、その後も毎年見にいきましたが、少なくとも事故後3年間は同じ状況が続きました。それが許せないんです。」

>なんと、かつて大ピラミッド(人間ピラミッド)の崩壊により,4人が同時に骨折をしたというのである。巨大であったために崩壊時の負荷が大きかったものと推察される。それらの事故を受けて報告資料では、安全配慮として組み方の順序や腕の置き方などの留意点が示され、そして結局は大ピラミッドの研修が続けられていったのである。


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