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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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ちょっと興味深い記事

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小学生から英語を必修にするということですが、しかし現実にどれくらいの人間が英語を社会人になってから必要とするかは疑問です。実際問題として、日本人で英語を職業として必要としている人間の多くは、英語の教員(英会話学校などをふくむ)じゃないですかね。日本は、教科書も英語が必要な国とか学校の講義で英語を必要とする国(たとえば北欧とか)じゃないですから。または英国の旧植民地のように、さまざまな言語が交錯して、なかばむりやり英語を共通言語としている国(インドなど)でももちろんない。日本は、津々浦々どこでも日本語ができればそれで不自由しない国です。

たとえばの話、米国の裏庭扱いされることすらあるラテンアメリカの国々も、国民はだいたいにおいて英語が苦手です。日本よりは、ラテンアメリカ(とくにメキシコなんか)のほうが英語ができれば得な機会は多いでしょうが、それだってそんな程度です。学校の教科書が自国語で、英語が共通語扱いされていない国なら、英語の必然性はそんなに高くない。仕事で英語を使う人間なんて、英語の教師以外はそんなに多くはありませんから。

実際には英語ができれば大学の勉強にはとても役に立ちますが、それはある程度のレベルの大学生の話だし、また彼(女)らが大学卒業後に仕事で英語を使うことはあまり多くない。

もちろん趣味で英語を使う人(私もそうです)なら英語は大いに役立ちますが、これは私がフランス語を勉強することとそんなに相違はない。英語が日本人に現実にそんなに必要だとはいいかねるでしょう。

私としては、英語やフランス語の翻訳をこのブログでも定期的に発表していますし、また世界中を旅行していますので、英語もフランス語も大いに役立っていますが、それは趣味の話だしね(笑)。世の中たいていの人は、仕事で英語が全く役に立たないことはないにしても、勉強するのならほかのことをしたほうがずっと役に立つというものでしょう。映画やTVドラマの台詞を字幕なしに理解したいと仮に希望しても、しかしそれは仕事に役立つわけではない。

そんなことを考えていたら、このような記事を読みました。引用します。

「英語」は本当に必要なのか…大学関係者から漏れる“英語不要論”
産経新聞 12月25日(木)8時5分配信


.英語をめぐる中高生の意識(写真:産経新聞)
 文部科学省の中央教育審議会で、子供たちが実用的な英語を学ぶ環境づくりを進める議論が本格的に始まった。平成28年度にも改定される新学習指導要領では、小学生高学年から教科として導入される見通しだ。高校でも討論や交渉力を高める方針が示されている。だが、英語教育の“抜本的改革”は過去幾度となく繰り返されながら、子供たちに英語力が身についたとの実感が乏しいのも事実。改めて考えてみたい。英語って本当に必要なのか-。

■日本の英語教育に根本的疑問も

 文科省は12月2日、「英検」や「TOEFL(トーフル)」などの民間資格試験を、大学入試に活用できるかどうかを検討する有識者会合を立ち上げた。席上、活用の是非とは別に、有識者から日本の英語教育そのものへの根本的な疑問が相次いだ。

 一部の教育関係者からは、「英語教育は必要」としながらも、差し迫った課題ではないとの意見も聞かれた。

 全国公立短期大学協会副会長の中村慶久委員も英語教育の改革を「えらく遠い話のように感じる」と話した。短大教育が医療や福祉、保育などの分野の比重を高める中で、英語教育の推進に対する教育者側の感覚的な違和感ともいえる。

■中高生の半数…「英語使うことない」

 子供たち自身は、英語学習をどのように受け止めているのだろうか。

 ベネッセ教育総合研究所が今年3月に全国の中高生約6200人を対象にアンケートを行ったところ、中高生ともに9割以上が「仕事で英語を使うことがある」など社会生活での英語の必要性を感じていることが分かった。

 一方で、「自分自身が英語を使うイメージがあるか」と尋ねたところ、中学生の44%、高校生の46%が「英語を使うことはほとんどない」と回答。調査を担当したベネッセ教育総研の加藤由美主任研究員は「日本の大部分の子供たちは教室の外に出れば、英語を使う環境にないのが現状。ただし、メディアなどにより『英語が必要』という意識はある」と説明する。

 さらに学校での授業内容についても、中高の約8~9割が「英文を日本語に訳す」「単語の意味や英文の仕組みについて先生の説明を聞く」と回答するなど、受け身的だ。一方で、授業で自分の考えなどを英語で話す機会は中学2年の55%をピークに、学年が上がるごとに低下。高校3年の時点で26%にとどまっており、「授業での学びと、英語を使うことにも大きなずれがある」(加藤主任研究員)のが現状だ。

■財界は「企業が語学教育せざるを得ない」と嘆く

 だが、教育界の英語教育熱は高まる一方だ。文科省が進める改革では、「読む」「書く」「聞く」「話す」-の4技能をバランス良く盛り込んだ実用的な学習環境づくりが喫緊の課題とされ、議論が進んでいる。

 12月2日の文科省の有識者会議では「(英語教育の)必然性はない」と述べた委員らに対し、財界側から出席した日本経済団体連合会(経団連)の教育問題委員会企画部会長の三宅龍哉委員が「ビジネスにおいては必然性は高い。社員を海外駐在などへ送り出す際、(企業が)語学教育をせざるを得ない現状だ」と正反対の意見を述べた。

 こうした実用的な英語力の必要性は、昭和30年に当時の日本経営者団体連盟(日経連、現経団連)が「会話力を身につける」などと要望を出すなど、これまで幾度も繰り返されてきている。なぜ、英語力は身につかないのか。

 元大学入試センター教授の小野博・福岡大客員教授(コミュニケーション科学)は「授業づくりの前提に、学習内容の差別をしないという平等主義があった。そのため、学校に習熟度別など効率的な英語取得法が取り入れられてこなかった」と指摘。その上で「社会情勢の変化により日本企業のアジア進出がさらに拡大したり、逆に移民を受け入れるなど、今後日本社会は変化を余儀なくされる可能性が高い。英語は必ず必要になる」と断言する。

■専門家は「能力や希望に応じた多様な学習の場を」と指摘

 立教大は、平成28年度の一般入試から「英検」などの民間資格試験の活用を他大学に先駆けて決めた。塚本伸一副総長は「卒業生にその力量を身につけさせるためにも高度な英語教育は欠かせない」と話す。

 立教大では平成20年、より実戦的な英語を学べる「異文化コミュニケーション学部」を新設すると、教養英語中心の文学部英米文学科の志願者が激減し、新設学部に人気が集中した。塚本副総長は「学生が求めていたものが教養としての英語ではなく、ツール(道具)としての英語だということが分かった」と語る。英語を遠いものと感じる生徒らがいる一方、英語を積極的に身につけたいと考える層も薄くはない。

 塚本副総長は「高校進学率がほぼ100パーセントとなる中、(高校などの英語教育に)一律の基準を設けるのは無理があるのではないか」と疑問を呈する。

 小野名誉教授は「外交官や通訳など高度な英語力が必要とされる人たちと、アジアへ向かうビジネスマンらとでは、求められる単語数や発音などは自ずと異なる。それぞれの能力や、将来の希望などに応じた多様な教育の枠組みを作っていくことが大切だ」と指摘している。
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記事中小野氏の談話

>社会情勢の変化により日本企業のアジア進出がさらに拡大したり、逆に移民を受け入れるなど、今後日本社会は変化を余儀なくされる可能性が高い。英語は必ず必要になる

ってのは、逆に言うと現時点では英語は必ずしも必要でない、っていう認識なんですかね? そうだとしたら、これって「語るに落ちる」のたぐいなのかもです。日経連が会話中心の英語教育をえんえん主張してそれが今日にいたるまで実現していないということも、つまりは海外赴任する人には英語教育を必要とするとしても、それ以外の人たちには必ずしも必要ないということでしょう。また小野氏の言う移民受け入れについていえば、移民として日本に来る人たちの多くは、フィリピン人を除けば英語がたぶん得意ではないし(インド系の国の人たちが大勢日本に移民に来るという仮定は、あまり現実的でないと思います)、実際問題としては、移民する人たちが日本語を学ぶということになるんじゃないんですかね。移民ではなくても、さまざまな業務渡航で日本に来る人たちと英語で対応する機会はたしかに増えるとは思いますが、しかしそういった人たちと直接仕事で対応するのは、ごく限られた人たちでしかないでしょう。

なお、私が記事を引用したURLでは、

>英語教育の“抜本的改革”は過去幾度となく繰り返されながら、子供たちに英語力が身についたとの実感が乏しい。英語は本当に必要なのか――。

という注釈があります。これは産経でなく、記事の引用元の方の付言でしょう。

それにしても、識者の発言じゃなくて記者の地の文章で、

>英語を遠いものと感じる生徒らがいる一方、英語を積極的に身につけたいと考える層も薄くはない。

と書いているのは、やはり「英語を積極的に身につけたいと考える層が厚い」と断言はしかねるということですね。婉曲表現にせざるを得ないと認識しているということでしょう。

私の勝手な予想では、たぶん英語教育自体は今後も日本で続くでしょうが、それらが日本人一般が生きていくうえで役に立つということにはなかなかならないんじゃないんですかね。英語を勉強すれば入試で役に立つ、ということであり続ける可能性が高いと思います(と、最後は私も婉曲な表現でこの記事を終えます)。


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