ちょっと気になった新聞記事を。
><前橋3人殺傷>強殺容疑で再逮捕方針「盗んだ米で生活」
毎日新聞 1月30日(金)6時45分配信
. 前橋市の民家2軒で高齢者3人が殺傷された事件で、群馬県警は、殺人容疑などで逮捕した同市本町1、無職、土屋和也容疑者(26)を来週にも強盗殺人容疑で再逮捕する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、土屋容疑者は、93歳女性が殺害された事件があった昨年11月から約1カ月間について「(女性宅から)盗んだ米、さきイカのほか、砂糖と水で暮らしていた」と供述。女性宅は仏壇やたんすが物色されていた。県警は、食料や金を奪うのが目的だったとみている。
土屋容疑者は12月に、別の民家に侵入。家にあったリンゴを食べたが、住人に姿を見られ、食料は持ち帰れなかった。土屋容疑者はその5日後に市内のラーメン店に侵入した容疑で逮捕されたが、チャーシューとメンマが盗まれており、所持金は100円程度だった。県警は食料に困り、相次いで事件を起こしたとみている。
県警によると、土屋容疑者は昨年12月16日、同市の民家に侵入し、80代の夫婦を殺傷したとして殺人と殺人未遂容疑で逮捕された。11月11日には近くの民家で93歳女性が殺されているのが発見されている。土屋容疑者は両事件とも「自分がやった」と供述しているという。【尾崎修二】
で、私がちょっと引っかかっているのが、前に読んだ記事です。
>前橋の夫婦殺傷:身寄りなく孤立 逮捕の男、生活困窮も引き金 /群馬
毎日新聞 2014年12月28日 地方版
前橋市三俣町2の民家で80代の夫婦が殺傷された事件で、殺人未遂容疑で県警に逮捕された同市本町1、無職、土屋和也容疑者(26)が、周囲に親しい知人がおらず、身寄りがない状態だったことが捜査関係者らへの取材で分かった。逮捕前の所持金はわずかで、自宅の電気は止められていた。県警は孤立や生活困窮が事件の背景にあるとみて調べている。
土屋容疑者は23日、かつて勤務したラーメン店への建造物侵入容疑で逮捕された。店関係者によると、倉庫の鍵が壊され、チャーシューやメンマ約4000円相当が盗まれた。県警は土屋容疑者が食べ物に困って盗みに入ったとみている。この店は8〜9月にも複数回、現金計40万円が盗まれる被害に遭っている。
土屋容疑者が福島県の高校卒業後に働いていた塗装会社の関係者は「真面目で盗み癖もなかったが、意思疎通が苦手だった。友達といるところを見たことがない」と話す。近くに住む祖父母の自宅に住んでいたという。
塗装業者を8カ月で解雇された土屋容疑者は、前橋市に転居して建設会社で働いた。当時を知る男性は「前橋でも友人は皆無だった」と話す。
夫妻殺傷事件は16日に発生。川浦種吉(たねきち)さん(81)が首などを刺され2日後に死亡し、妻の二美江(ふみえ)さん(80)は首や胸を刺され重傷を負った。
川浦さん宅から西へ約750メートル離れた同市日吉町1では11月上旬に1人暮らしの小島由枝(よしえ)さん(93)が刺殺された。土屋容疑者は両事件への関与を認めているという。
県警は27日、土屋容疑者を二美江さん殺人未遂容疑で前橋地検に送致した。【尾崎修二】
こちらの記事も。
>前橋・高齢者殺傷事件 「相談する人いなかった」
2015年1月20日
「仕事がうまくいかず、金に困っても相談する人がいなかった」。前橋市の高齢者殺傷事件で、殺人容疑で再逮捕された土屋和也容疑者(26)は、県警の調べにこう供述した。複雑な生い立ち。仕事が長く続かず職を転々とする中、周囲から孤立したまま、次第に困窮していく姿が浮かんだ。
県警や関係者によると、土屋容疑者は栃木県足利市生まれ。両親が離婚し、小中学校時代は太田市の児童養護施設で過ごした。高校は福島県西会津町に移り、祖父母と伯母の家から通った。
高校で三年間、同じクラスだった男性会社員(26)は「いじめられていたわけではないのに常に一人でいた」と振り返る。話しかけても簡単な返事だけ。卓球部に所属し、成績はほどほどだった。
高校卒業後、町内の塗装会社に就職したが、約八カ月で解雇された。社長は「同居の伯母と不仲だった。家の電話を使わせてもらえず、駅の公衆電話から仕事の電話をかけていた」と証言する。
何らかの理由で家族と暮らせない青少年を支える前橋市の施設に移り住んだ土屋容疑者は約五カ月の食品工場勤務を経て、建設会社に就職。約七カ月で解雇されラーメン店に転職した。
店長は「手に職を付けて、食べていけるように」との思いで採用。ぼさぼさ髪の土屋容疑者に散髪代を渡したり、仕事を覚えられずに「辞めたい」と相談してきた際には、引き留めたりと、気に掛けてきた。野良猫に缶詰を買い与える動物好きな一面もあったという。
通常、数カ月で見習いから正社員に登用されるが、アルバイトのまま昨年六月、約四年勤めたラーメン店を辞めた。その後、入った警備会社は十月に解雇された。
電気やガスは止められ、消費者金融から百数十万円の借金があった。ある捜査幹部は「救いの手はあったはず。何が問題だったのか、自分を見つめ直してほしい」と話した。
<前橋市の高齢者殺傷事件> 前橋市三俣町の住宅で昨年12月、夫婦が殺傷され、県警は妻川浦二美江さん(80)への殺人未遂容疑で無職土屋和也容疑者(26)を逮捕。夫種吉さん=当時(81)=への殺人容疑で今月に再逮捕した。昨年11月、同市日吉町の住宅で、首を刺されるなどして殺害された小島由枝さん=当時(93)=のDNA型が、土屋容疑者宅にあった刃物から検出されており、殺害に関与したとみて裏付けを進めている。
こちらは長いので、私が興味を持ったところを(魚拓1、魚拓2、魚拓3、魚拓4)。
>■元勤務先でチャーシュー盗み御用、自宅はゴミ屋敷
川浦さん夫婦を襲った日からわずか5日後の12月21日、土屋容疑者はかつて勤務していた同市内のラーメン店に侵入し、チャーシューやメンマを盗んだ。その姿は店の防犯カメラに映っており、土屋容疑者に気付いた男性店主はすぐに警察に通報。県警は23日、同容疑者を建造物侵入の疑いで逮捕した。
県警によると、土屋容疑者は逮捕後、三俣町での犯行をほのめかす供述をはじめ、川浦さん宅で見つかったリンゴから採取した体液や同町周辺の防犯カメラの映像などから容疑を固め二美江さんに対する殺人未遂容疑で再逮捕、1月15日には種吉さんに対する殺人容疑で再々逮捕した。
ラーメン店への建造物侵入容疑で逮捕された際、土屋容疑者の所持金はなかった。家にもわずかな現金しかなく、電気メーターは止まった状態で、消費者金融に百数十万円の借金があった。家の中は空のカップ麺やペットボトルが散乱し、近所の人によると、「ゴミ屋敷」状態だったという。
■不幸な幼少期、孤立し職を転々…
土屋容疑者は栃木県足利市の出身で、幼い頃に両親が離婚し一時、児童養護施設に預けられていた。
その後、太田市内の小中学校に通い、中学卒業後は祖父母のいる福島県内の高校に進学。不幸な幼少期の影響からか、学校では孤立しがちだったとされ、平成19年に高校卒業後、同県内の塗装会社に就職したが、長続きしなかった。
22年10月からは今回の事件の端緒となった前橋市内のラーメン店に勤務。男性店主によると、正社員希望だったが、能力的に仕事を任せることはできず、「ほとんどしゃべらず、コミュニケーション下手。怒られたりすると、ぶつぶつ言って、仕事がいっぱいいっぱいになるとパニックになって皿を割ったこともあった」という。
ラーメン店を昨年6月に辞めた後は警備会社に勤務したものの9月ごろに出社しなくなり、10月に解雇。それ以降は無職だった。
たくさんの記事から多くを引用させていただきました。いろいろな視点からこの犯人を考えていきたいと思ったのです。
めったなことはいえませんが、この犯人もだいぶ精神に問題があったように思います。
>成績はほどほどだった。
とあるのでいわゆる知的障害ではなかったのかもしれませんが(どのような高校に通っていたかは分かりませんが)、たぶん発達障害その他はあったであろうと考えられます。そして家庭環境が悪い・・・となると、なかなか救いはありません。
捜査幹部の言う
>救いの手はあったはず。何が問題だったのか、自分を見つめ直してほしい
とは、そのこと自体はまことに「お説ごもっとも」だと思いますが、しかしたぶんこの男性には救いの手を捜すことはできなかったんでしょうね。できていれば、たぶんこのような悪い事態にはならなかったはず。たいていの人間は、ここまで悪くなる前になんらかのブレーキ(それは福祉だったりあるいは警察だったりします)がかかってこのような重大事件を起こさないで済みますが、しかしこの犯人は、まさに最悪の犯罪を起こしてしまうところまで突っ走ってしまいました。
前に中度の知的障害者と考えられる人物が2件の強盗殺人事件を犯して死刑が確定したという記事をご紹介しました。
行政その他の支援がなかったことが非常に悪い事態をもたらした大きな要因と思われる強盗殺人事件の実例
検察の起訴や判決が正しければ、死刑が確定した人は、お気に入りのスナックのつけを払うために強盗殺人をしました。そんなことで死刑なんかになる犯罪をしなくてもいいだろうと思いますが、この人はたぶん「死刑」とか「罪」といったことへの認識に欠けていたのでしょう、まさに取り返しのつかない犯罪をしてしまいました。
今回の事件の犯人も、求刑はほぼ間違いなく死刑、判決もその可能性は高いはずです。私は死刑反対論者なのでこの人物を死刑にしろとは言いませんが、しかし判決は非常に厳しいものが予想されます。食い物に困ったからといって2人も人を殺さなくてもいいではないかと思いますが、上のスナックのつけを払うために2人殺してしまった人物と同じく2人の尊い命を奪ってしまったのです。
どうなんですかねえ。行政なりその他の福祉なりが、この人に手を差し伸べることができたかどうか、少なくともスナックの事件の犯人よりはそれは難しいでしょうが、彼がそれなりに食事をとれる状態であれば、この事件は、すくなくとも殺人はなかったと思いますので、非常に残念ですね。前にも書きましたように、そうであれば2人の殺された方も、そしてこの犯人も、死んだり死刑の可能性が高いなどという立場にはならないですんだわけです。
お亡くなりになった2人のお年寄りのご冥福を祈りまして、この記事を終えます。