すみません、もっと早く記事を書くつもりだったのですが、いろいろ記事が渋滞していて、本日の発表となりました。
ロベール・ブレッソンが1969年に発表した「やさしい女」が、現在都内で上映されています。これから日本中で上映されることになります。
映画「やさしい女」 (@yasashii2015) | Twitter
予告編もどうぞ。
【予告】やさしい女
2012年に、なかなか観ることが難しい映画である「白夜」が再公開されましたが(35㎜フィルムによる上映というおまけつきでした)、今回はデジタル上映です。フランスでデジタルによる再公開があったので、その関係で再公開が実現したようです。下のポスターは1969年の初回上映のもの。
DVDその他ソフト化はされる予定はないとのことですので、興味のある方は今回の上映を逃さずご覧になることをすすめます。1999年に東京映画祭の絡みでブレッソンの全作品が公開されたことがあったのですが、そういう特別な機会でもないと、「白夜」ほどではないとしてもこの映画も今後観るのが結構大変かもです。「白夜」は、私はけっきょく3回観てしまいました。
ただ、「やさしい女」は、過去米国でVHSが発売されたことがあり、それは今日でも入手できますので、世界的にソフトは発売されていない(らしい)「白夜」とくらべれば、相対的には観ることは容易です。
「やさしい女」は、新宿にある新宿武蔵野館で土曜日(4月18日)に観ることができました。すでに3月に前売り券を買っていたのですが、この映画の再公開を知ったときは思わず「おお!」と声をあげそうになってしまったくらいです。
この映画は、「白夜」と同様ドストエフスキーの小説の映画化であり、世間ではドミニク・サンダ(Dominique Sanda)の映画デビュー作として知られているかもしれません。ブレッソンという人は、映画にいわゆる職業俳優を使わないことで知られており、サンダも彼がこの映画の主演に抜てきした際は、モデルであって演技経験はありませんでした。その他の出演者も無名の人、あるいは映画評論家(医者を演じたクロード・オリエという人は、つい最近2014年10月に亡くなったようです)といった素人が起用されています。
それでは、ドミニク・サンダのこの映画での美しい写真を何枚か。そんなに大胆ではありませんが、この映画でも彼女のヌードのシーンがあります。
さて、ここからちょっとマニアな世界の話になります。興味のない方は、上のところまでで十分かと思いますので、読んでいただかなくて大丈夫です。
ドミニク・サンダは、この映画に出演した後その美しさが話題となり、様々な映画に出演するに至りましたが、その夫を演じたギィ・フランジャン(Guy Frangin)という人については、さっぱり情報がありません。今回の再公開ではパンフレットはありませんが、1986年にこの映画が日本初公開された際のパンフレットには、彼について大要「ブレッソンが、画廊のオープニングで知り合った画家とのことだが詳細は不明」みたいなことが書かれていました。ずいぶん以前私もちょっとこの人について調べてみたことがあったのですが、この映画に出演したということ以外あまり内容のある情報はありませんでした。
ところが、今回、この映画のツイッターで、こんな情報を知りました。
>【ギイ・フランジャンを探せ】出演者に職業俳優を使わないことで知られるブレッソン。『やさしい女』の夫ギイ・フランジャンも「画家らしいが詳細は不明」。1934年生まれの同名の彫刻家という説も。本作公開時には35歳、仮説ではありますが…。
へえと思い、ちょっと調べてみたところ、次のようなHPを見つけました(将来削除された時のために魚拓)。
Genève - Jean Piaget - Van der Krogtで、そのHPに
>Signed: frangin
cire perdue g. petit fleurier suisse
とあります。1996年に制作されたジャン・ピアジェの銅像ですかね。しかしこちらの写真にはけっこう驚きました。
さらにこのようなページも見つけました(将来削除された時のために魚拓)。
F - Recherche artisteクリックしてみましたが、内容のある記述はありませんでした。しかしこの「Guy Frangin」氏が、上のピアジュの像を制作した人と同一人物であるのは間違いないところです。残念ながら、今回の調査では、彫刻家としての「Guy Frangin」氏についての情報は、これ以外のものを発見できませんでした。しかしかなりこの2つのHPだけでも有力な情報ではないかと私は思います。
そうすると、上のツイッターにもあるように、年齢も合うし、画家と彫刻家というので全くイコールではありませんが、しかし非常に近接した職業だし(画家であり彫刻家でもある人というのもいますしね)、おそらくこの彫刻家の人と映画に出たGuy Franjin氏は同一人物であろうかと私は思います。断言はできませんが、その可能性は非常に高いでしょう。そして、上の情報が事実なら、氏は2004年に70歳(あるいは69歳)でお亡くなりになっているようです。
いずれにせよ、ブレッソンの映画というのはやはり一見の価値はあるかと思います。ぜひどうぞ。
なお、こちらにgettyimagesによるロベール・ブレッソンの写真があり、「やさしい女」の撮影風景の写真も収録されています。これもなかなか貴重な写真かと思いますので、ぜひご覧になってください。1968年6月4日撮影とのことです。この情報は、こちらのサイトからいただきました。感謝を申し上げます。