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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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奇妙な経験

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別にそんなにすごい「奇妙な経験」というわけでもありませんが、とある平日のお昼時のエピソードということで。

某日の平日正午過ぎ、私が某JR駅の改札口となりにあるNEWDAYSから出て電車に乗ろうとした時、とあるお年寄りの女性が私に声をかけてきました。

お年寄り「お兄さん、私をドトール(コーヒー)まで連れて行ってくれないかい?」

いまさら「お兄さん」とよばれる年齢でもありませんが、それはともかく人生でそんな申し出を受けたことのない私は驚きました。

その女性は、あるいは年齢は90歳を超えているかとも思われました。つまり一人で歩くのが困難なので、そこから幅広い通路の向こうにあるドトールコーヒーへ私に手を引いてもらいたいということです。

ちょっと戸惑いましたが、別に急いでいるわけではないし、そんなことでこの女性の役に立つのなら、当然断るわけにもいきません。私は

「ちょっと待って!」

といって、財布をポケットにしまってその女性の手をとって、通路の端から端まで歩くことにしました。

その女性は

「あんまり早く歩かないでね!」

と私に言いました。もちろん私も早足で歩くわけもなく、ゆっくり歩きます。べつにそんな視線を感じたわけでもありませんが、たぶん私を見た人は、「なにやってんの、あの人」くらいに思ったかも。あるいは孫が祖母の世話をしていると思った人もいるかもしれません。

ほぼ真ん中まで歩いたところで、彼女は言いました。

お年寄り「あの柱につかまってちょっと休むわ!」

彼女自身は、とてもなれた口調でそういいました。つまりはその通路を横切る際は、いつもそうしているようです。

また歩きはじめます。彼女は「えっちらおっちら」とか言いながら歩きます。元気な人です。

彼女は

「ドトールの手前から2番目の柱につかまるのよ」

と私に言いました。で、ドトールコーヒーに行くと、なるほど、確かに彼女のいう手前から2番目の柱というのがありました。私は自動ドアを足で踏んでひらきっぱなしにして彼女を店の中に導きました。で、お年寄りを柱につかませました。

お年寄り「ありがとう、お兄さん」

私は(なぜか)彼女とハイタッチして別れました。時間にして数分ほどでしたが、なんとも奇妙な経験でした。でもお年寄りの役に立ったのだから、これは私にとっても望外の幸せというものでしょう。

ただ私って、いろんなひとからやたら道を聞かれるし(名古屋や大阪のような地元でないところから、なぜかロンドンやニューヨークでも道を聞かれます)、よく写真も撮ってくれと頼まれます。頼まれやすい雰囲気があるのでしょう。あるいはちゃんと教えてくれる、いい写真を撮ってもらえるとか期待されているんですかね。


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