米国の大統領選挙予備選挙は、来月1日が、スーパーチューズデーになります。つまり選挙の前段階が佳境になるということです。そこで、2月21日の産経新聞記事を。
>2016.2.21 10:22
【米大統領選】
トランプ氏、サウスカロライナ州で勝利確実 米メディア報道 ルビオ氏やクルーズ氏突き放す
【ワシントン=小雲規生】米大統領選に向けた候補者指名争いで、共和党のサウスカロライナ州予備選と民主党のネバダ州党員集会が20日開かれた。両党ともアイオワ州、ニューハンプシャー州に続く第3戦目。共和党では不動産王、ドナルド・トランプ氏の勝利が確実。民主党ではヒラリー・クリントン前国務長官がバーニー・サンダース上院議員に勝利した。
サウスカロライナ州では午後7時(日本時間21日午前9時)に共和党予備選の投票が締め切られた。米メディアは7時半ごろから、相次いで「トランプ氏が勝利」と報じた。米CNNテレビによると、開票率6%段階の得票率は、トランプ氏が32・5%、マルコ・ルビオ上院議員が22・0%、テッド・クルーズ上院議員が21・5%、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が9・9%、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事が7・6%、元神経外科医のベン・カーソン氏が6・3%。
一方、クリントン氏は午後6時15分からネバダ州内の選挙対策本部での演説で「これはあなたたちの勝利だ」と述べ、勝利宣言した。ネバダ州の民主党本部によると、全1714地区のうち84%の開票結果が出た段階で、クリントン氏への支持が52%、サンダース氏への支持が48%。米メディアは午後5時(日本時間21日午前7時)すぎから、相次いでクリントン氏勝利の見通しを示していた。
これまでの2戦はそれぞれクリントン氏とサンダース氏が制しており、ネバダ州での勝利でクリントン氏が頭一つリードした。
このあとジェブ・ブッシュが選挙戦を撤退、共和党はトランプが現段階では有利ですかね。
民主党はというと、私はもちろん米国籍保持者ではないのでどうこう言うことでもありませんが、個人的にはサンダース氏に頑張ってほしいところですが、現実に選挙で勝てる候補はヒラリーさんでしょうね。というわけで、民主党はなんだかんだといってヒラリーさんが有利でしょうが、いずれにせよサンダース氏の人気がヒラリーさんの政策に影響がいい形で与えられれば、サンダース氏の健闘も、単なる健闘以上のものになります。
さてさて、共和党でも同じことが言えて、仮にトランプが共和党の候補になったら、大統領選挙本番はかなり共和党が苦しくなります。いわゆる浮動票と呼ばれる人たちは、トランプには大統領になってほしくない、だから民主党候補に入れるという有権者が多いと考えられるからです。極端な話、最悪トランプが独立系の候補として出馬したら、共和党の勝ち目はなくなります。もっともニューヨーク市長だったブルームバーグ氏が出馬したら、民主党候補は苦しくなるということもあり得ます。彼は共和党にも所属していましたが、本来的には民主党系の人間でしょう。
さて、今日の記事で注目したいのが、テッド・クルーズです。彼は、共和党の牙城テキサス州の上院議員です。inti-solさんの記事を引用させていただくと、
>テッド・クルーズもまた、トランプと大同小異の保守強硬派です。キューバからの亡命者の子どもということで、もし当選すれば米国史上初のヒスパニック系大統領ということにはなるのですが、キューバ系移民はヒスパニックと言っても米国内ではちょっと特殊な位置にいる※こと、その政治的主義主張がおよそヒスパニック寄りとは対極にあることから、ヒスパニック系とは言い難い。母語もすでに英語でしょう。
※米国では、カストロ政権への対抗上、キューバからの移民は「政治亡命者」であるとして、無条件に永住権を認めてきました。それ以外のラテンアメリカ諸国からの不法移民は厳しい取り締まりの対象なのに、キューバ人だけが特別扱いなので、他の国の出身者との間には軋轢があるようです。
ということになります。なおWikipediaによると、
>高校時代から保守系団体でフリードマン、ハイエク、ミーゼズ、バスティアらの著作に親しみ、1992年にプリンストン大学ウィルソンスクールを卒業。大学時代はディベートで活躍し、全米チャンピオンになった経験もある。卒業論文はアメリカ合衆国憲法の起草者で第4代大統領のジェームズ・マディソンと権力分立に関するものだった。卒業後はハーバード・ロー・スクールに進学し、1995年に上位10%に与えられるmagna cum laudeを得て修了[1]。在学中はハーバード・ロー・レビューの編集者を務めた。
卒業後は連邦控訴裁判所の調査官(ロークラーク)を経て、1996年に連邦最高裁判所長官ウィリアム・レンキストの調査官となったが、これはヒスパニック系では初めてのことであった。その後ワシントンD.C.の法律事務所に勤務し、ジョン・ベイナー下院議員(後の院内総務)の私的顧問を務めている。1999年からは当時大統領を目指していたジョージ・W・ブッシュの政策アドバイザーを務め、2001年に成立したブッシュ政権では司法省副次官に任命された。2003年から2008年まではテキサス州の訟務長官(Solicitor General)を務め、多くの重要事件を手がけて知られるようになった。
退官後は再び法律事務所に勤務した。また、この間2004年から2009年にかけて、テキサス大学ロースクールで連邦最高裁の訴訟について講じた。
というわけで、非常に優秀な人間です。ただ共和党の支持者は、彼のような優秀な人間を必ずしも好まないところはあります。
それにしても高校時代からフリードマンやハイエクの本などを読んでいるとは、なかなかすごいですね。大学生だって勉強家でなければ読むのは大変です。彼の支持層は、これまたWikipediaによると、
>主な支持母体は、ティーパーティー運動、キリスト教福音派、キリスト教右派。
とあります。そして、「政策」という項がなかなかすごい。引用しましょう。
>政策はキリスト教右派の影響を強く受けており、保守の中でもとりわけ過激な保守強硬派とされる。ティーパーティー運動の代表的政治家である。
自由貿易の促進 米国愛国者法の再法制化 死刑制度の存続を支持 銃規制に反対 進化論を否定 人工妊娠中絶に反対 国民皆保険制度に反対 均等税の導入 最低賃金の引き上げに反対 不法移民の合法化に反対 LGBT(同性愛・性的少数派)の権利確立への反対 マリファナ合法化に反対 障害者権利条約の批准を阻止 小さな政府と新自由主義を支持 イスラエルとの同盟強化 イランやキューバとの融和路線に反対 イスラム国に対して絨毯爆撃の実施を主張している シリア内戦等中東への軍事介入には反対 ・・・(苦笑)。いやあ、なかなかすごいですね。ずばり進化論否定論者で人工妊娠中絶反対論者、最低賃金の引き上げに反対ですからねえ。もっともinti-solさんもご指摘のように、 >イスラム国に対して絨毯爆撃の実施を主張しているシリア内戦等中東への軍事介入には反対
というのはかなり矛盾した政策です。彼の主張が矛盾しているのか、wikipediaの要約が誤っているのかは分かりませんけど。
というところではあります。もちろん彼が仮に大統領になったとして、こういった政策をみんなやれるわけではないですけど。しかし例えば、この人が大統領になったら、ニューヨーク⇔ハバナの航空路なんか開設されないかもな。
でもさあ、こういう人間って、どこかで見たことない・・・? そう、われらが首相、安倍晋三そっくりじゃないですか(笑)。
まあクルーズは勉強とかはものすごく優秀で、安倍は自他ともに認める馬鹿ですが、でも話をすればこの2人はさぞ話は合いそうです。実際のところクルーズは、内心では安倍なんか馬鹿にしまくりでしょうが(ていうか、安倍を馬鹿にしていない米国の政治家なんかいるんですかね?)、価値観とかは似たり寄ったりです。
いずれにせよこの2人が米国大統領と日本の首相として会談する姿なんかはあんまり想像したくないなと考えて、この記事を終えます。またこの記事は、上に引用させていただいたinti-solさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。