過日このようなニュースを知りました。
>パンに縫い針…女逮捕 同店では3日前にも
2016年6月23日 00:06
北海道札幌市東区のショッピングセンターで22日、パンに縫い針を刺そうとした女が逮捕された。その瞬間を防犯カメラが捉えていた。
白い帽子を被った女がパンに触った次の瞬間、張り込んでいた警察官が女を取り押さえた。
偽計業務妨害の疑いで逮捕されたのは札幌市東区の女(69)。警察によると、女は22日午前11時半ごろ、札幌市東区北30条東8丁目のショッピングセンターの食品売り場で、売り物のパンに縫い針を差し込もうとした疑いが持たれている。
この店では、3日前にも針が刺さったハンバーガーが見つかっている。
調べに対し女は、「イライラしてやった」と容疑を認めていて、警察は3日前の事件も女の犯行とみて調べている。
動画を見ると、刺した瞬間に捜査員が身柄をおさえているので、つまり店に入った時点から完全にマークしていたということですね。たぶん前の犯行で防犯カメラに記録されていて、目星がついていたのでしょう。
それで私がこの記事(なぜかほかではこの事件の報道を確認できていません)を読んでいて印象に残ったのがこちら。
>イライラしてやった
こういう言い草前読んだことあるなあです。こちらの記事を。
あらゆる人間が不快になり、迷惑をする救いのない話
> 万引きで検挙される65歳以上の高齢女性が右肩上がりで増えていることが、15日に公表された2013年版犯罪白書で明らかになった。「イライラが募り、後先のことなんて考えられなかった」。刑務所から仮出所中の女性(67)が毎日新聞の取材に応じ、万引きを繰り返していた時の自分をそう振り返った。
最初の万引きは十数年前。15年ほど別居していた夫が「体が悪い。面倒を見てくれ」と戻ってきたのがきっかけだった。寝たきりの夫から毎日、食べたいものを書いたメモを渡された。仕事をしながら、メモ通りの食品を買って渡す日々。「なぜ、こんな人のために」。お金に困っていたわけではなかったが、怒りで冷静さを失い、総菜を万引きした。
3回目に店員に見つかった。この時は警察に引き渡されずに済んだが、捕まる怖さをイライラが上回り、やめられなかった。ついに逮捕され、執行猶予判決が確定したが、店に行くと「次は刑務所」という考えも「飛んでしまった」。実刑判決を受け、65歳で初めて刑務所に入り、1年半服役した。
どっちみち犯罪ですから、いかなる点でも同情や情状酌量の余地もないですが、しかしこのような犯罪は本当に困りますね。上にも書いたように、あらゆる人間が不快になり、迷惑をしますから。
だからしていいとは言いませんが、食い物に困って万引きをするというのなら、まだ同情の余地はあります。しかし商品に針を刺すとか、イライラしているから万引きをする、というのではお話にもなりません。家族、親戚、友人、知人、職場の同僚、警察、検察、裁判官、弁護士、刑務官、このような事件を報道する記者、全く関係のない私のような人間、もちろん店の関係者にいたるまで、非常に不快になるし、またいろいろな人間が迷惑を受けるわけです。
万引きをした人は、
>店に行くと「次は刑務所」という考えも「飛んでしまった」。
ということですが、私がこのブログで数回記事にしている元プロ野球選手の堂上隼人という人がいます。彼は、社会人時代に性犯罪をして、所属していた会社を追い出され、そしてドラフト会議で忌避されたり、興味を持ってくれた球団のあった米国球界挑戦もかないませんでした。犯罪歴が引っかかったのです。
それで更生したと認められてせっかくプロ野球に入れたのに、またまた性犯罪をしてしまったのです。それで実刑です。もう釈放されているはずですが、彼はまさにありとあらゆる人間を失望させ、迷惑をかけてしまいました。球団も、そういう前歴者を入団させるのなら絶対そんな犯罪をさせてはいけなかったし、するんだったらやっぱり入団させるなです。後知恵、そこまであいつが馬鹿だと思わなかった、かもですが、しかし非常に重大な事態になってしまったわけです。
で、私も、堂上は、別に「社会人時代は、会社(日産自動車)をクビになったとはいえ、最終的にはプロ野球に入れたのだから、今度も大丈夫だろう」なんて考えたわけではないのだと思います。たぶん犯罪をしたときは、自分の行動がどれだけ重大な事態を引き起こすとか、そんなことが頭から飛んでいたのでしょう。万引きをした人と同じです。ただ彼は、プロ野球選手という立場でもあるし、また性犯罪と犯罪もより悪質だったので、実名で報道されたし、また執行猶予判決もでなかったわけです。
性犯罪なんてどれも論外ですが、彼に「もう少しまともな対応は出来なかったのかねえ」なんて言ってもしょうがありませんが(なにしろ未成年にまで犯行をしちゃっていますので)、けっきょく彼も、自分の持つ闇の部分をおさえきれなかったのだろうなと思います。彼はプロ野球をクビになっています。クビは当然だし仕方ありませんが、今後の彼の人生が心配ですね。いや、彼自身がひどい目にあうのは不徳のいたすところというものですが、また性犯罪の再犯をして、被害者が出はしないかと思います。
それにしてもこのような犯罪は、本当に救いがないですね。犯罪をすることによるなんらかのプラスがあるわけでなく、ストレス発散といったら事態を単純化し過ぎかもですが、そういうたぐいのことが要因になっている。前に紹介した記事の中で、識者が
> 太田達也・慶応大法学部教授(刑事政策)は「高齢女性の犯罪増加の背景は経済的困窮や福祉の問題だけでなく、家族や近隣、行政から孤立し、心理的な閉塞(へいそく)感とともに支援を受けられなくなっていることが考えられる。万引きなど比較的軽い罪で起訴猶予となる者も、刑務所から釈放される者も、社会の中で孤立しないよう見守る仕組みが必要だ」と指摘している。
> 両全会の小畑輝海理事長は「万引きの動機は人それぞれだが、地域や家族の絆を失った人が多いように感じる。施設では、出所者の人間性を回復するため、民間ボランティアなど他人と会話する機会をなるべく多く設けるよう努めている」と話している。
と評していました。しかし、「孤立」とか地域の絆を失うとか「孤独」というのは本人の問題ですからね。他人は何もできないわけです。別に家族がいないとか、友人がいないからといって必ずしも孤立や孤独ではない。孤独を解消する場なんて世の中にいくらでもありますが、孤独な人にとっては、そのような場所などないのです。
それで過日図書館で、次のような本を借りました。まだ読んでいません。
孤独はすでに述べたとして、「貧困」も、経済的な側面は何とかできます。生活保護とかがある。しかしその精神的な側面はどうしようもありません。他人はなにもできない。過日の英国のEU離脱問題にしても、経済的には離脱しない方がいいとしても、例えば移民と雇用面とかで競合する立場の人間からすれば、そんな話は馬鹿も休み休み言えだ、くらいのものでしかないでしょう。これまた他人(他国)は、最終的には口を出せないわけです。
こういうのは、最終的には人間の闇みたいなものがあるから非常に難しいですよね。いまさら社会的に失うものもない人たちというわけでもないプロ野球選手にしたって、実に意味のない性犯罪を犯す。これは例外的なものでしょうが、よりスケールの小さなものが万引きだったりするのでしょう。なんとも救いようがありません。他人がどうこうできることではない。
すみません。今日も実に救いのない記事でした。