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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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日本の治安は良好な状態にある(2016年バージョン)

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2015年、といっても2月初めの記事ですので、もう2年弱前の記事ですが、このような記事を書きました。

日本の治安は良好な状態にある(今後は新規の死刑確定者は減少する可能性が高い)

上の記事で私は、統計と警察庁の発表を報道した記事を引用したうえで、日本の治安は良好な状態にあると断言できるということを書きました。

さて、やや前ですが、こんな記事が配信されました。

>日本会議

「理想はサザエさん一家」啓発 24条改正巡り

毎日新聞2016年11月3日 02時30分(最終更新 11月3日 12時49分)

 改憲運動を展開している保守団体「日本会議」(田久保忠衛会長)は、憲法24条を改正すべきだとの主張を強めている。背景には伝統的な家族を理想とする心情がにじむ。家族のあり方は憲法で定めるべきか--。

 「サザエさんが今も高い国民的人気を誇るのはなぜでしょう」。日本会議の関連団体が制作した啓発DVDの一場面。ナレーターは24条により家族の解体が進んだ結果、さまざまな社会問題が起きているとして、3世代同居のサザエさん一家を理想と持ち上げた。

 「個人の尊重や男女の平等だけでは祖先からの命のリレーは途切れ、日本民族は絶滅していく」。日本会議の政策委員を務める伊藤哲夫氏は9月、埼玉県内の講演で、改憲テーマの一つとして24条を取り上げた。安倍晋三首相のブレーンも務める伊藤氏は「家族の関係を憲法にうたうべきだ」と力説した。

(後略)

>ナレーターは24条により家族の解体が進んだ結果、さまざまな社会問題が起きている

>個人の尊重や男女の平等だけでは祖先からの命のリレーは途切れ、日本民族は絶滅していく

あるいは、先方の資料とかを読めばそれなりに具体的なことが書いてあるのかもしれませんが(その可能性は低いでしょう)、この記事に載っていることですと、あまりに内容が抽象的で具体的なことがありません。連中の主張する社会問題とはどのようなものなのか。

そのことの発生が、家族関係の変化と何らかの相関関係があるのか、あったとして因果関係を証明できるんですかね(笑)。まあこの人たちに、証明しろなんて言ったって、証明する意思も能力もないでしょう。だいたい社会問題の最たるものである犯罪なんて、むしろ日本の治安は改善されているんですけどね。もともと非常によかったのが、さらに良くなっています。

というわけで、今年度バージョンの記事を。まずは、警察庁による「平成26年、27年の犯罪情勢」です。その冒頭です。

>まず、我が国の刑法犯認知件数が、平成 14 年をピークに、以後 13 年連続して減少し、27 年には、42 年ぶ りに戦後最少を更新したことから、その理由として考えられる内容を「平成 14 年以降の刑法犯認知件数の減 少理由に関する分析」としてとりまとめている。

ね、わかるでしょ。日本の治安は大変良くなっているわけです。それでは最初の1ページの図をご覧ください。

2002年ごろに犯罪認知件数が頂点に達したのは、たぶん警察が「前さばき」と呼ばれる事件を受理しないということをやめたこと(これは、桶川ストーカー事件とか、栃木のリンチ殺人などが問題となったことが大きかったようです)と、自転車の窃盗が事件化されたことが大きいようです。詳細はこちらの本を参照してください。

安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

2004年に出版された本ですが、いまだに増刷されているようです。それだけエポックメイキングな本だったということでしょう。

それでは究極の犯罪と思われる殺人事件の被害者数はどうでしょうか。こちらから引用します。

 

 人口動態統計での、他殺による死亡者数は、2015年で314人です。元の表はこちら。交通事故を除く他殺で死亡した人は、確認されている限りでは、1日あたり日本全国で1人にも満たない数なわけです。これはなかなかすごい話ではないでしょうか。日本の人口は、減少気味とはいえ、2015年の国勢調査で、1億2千7百万を超えています。

ただ他殺による死亡者数は、2016年は、相模原での大量殺人事件があったせいもあり、2015年より増加する可能性はありますね。もちろんそれ以降もどのように数字が推移するかは予断を許しませんので、私なりにこれからもこの件はチェックしていきたいと思います。

いずれにせよ、ためにする議論だったらもはや論じるような話ではありませんが、これらをかんがみると、日本の治安はきわめて良好な状態にあると断じてよろしいんじゃないんですかね。日本会議の連中の主張する社会問題というのがどのようなものか詳らかでありませんが、家族のありかたと治安については、少なくとも彼らの主張は相関性も因果関係も明らかでないと思われます。相関関係があるとすれば、むしろ核家族化、未婚化、少子化などのほうがありそうです。それではついでにもう一つグラフをご紹介します。出典は、上のグラフと同じサイトより。

意外な気もしますが、70年代くらいまでは英国のほうが日本より他殺率が低く、ドイツは日本より低かったのが、やはり70年代に日本に並び高くなり、現在はまた同じくらいのようですね。いずれにせよ日本の他殺率はトレンドとしては順調に下がっているわけです。まさに日本は、世界に誇るべき安全な国といえそうです。

でも日本会議の連中は、こういうことをどう認識しているんですかね? 聞いてみてもまともな回答は返ってこないでしょうが、それもどうかです。

ところで引用記事にもありますが、伊藤哲夫というのは札付きの極右で安倍ブレーンですね。こういう馬鹿をブレーンにしているんだから、安倍晋三の非常識さがわかるというものです。だいたい家族の関係なんか憲法にうたったって、そんなの実質的な効果があるわけもないのですが、こういうことに熱中する連中は、効果うんぬんを超越したところで物事を考えますから、これもひどいものです。

さらに記事で私が「後略」としたところには、

>こうした家族観は自民党改憲草案や安倍政権と通底する。

とあります。個人的な意見ですが、いわゆる極右政党が提起するものならともかく、国政で優に過半数を超えている政権与党の政党が出す「改憲草案」なるものがあそこまで時代錯誤で非常識な事例ってのは、少なくともGなんとかとか「先進国」と言われる国々の中では他に例を見ないんじゃないんですかね。あればぜひ知りたいと思います。そう考えると、あらためて現在の自民党とか安倍政権の異常さに驚きます。

というようなことを私がinti-solさんの記事でコメントしたら、inti-solさんから

>いや、だから極右政党が国政で過半数を取っちゃった、ということですよ、残念ながら。今の自民党は-おおさか維新もそうですが、極右以外のものではないでしょう。

とたしなめられてしまいました。まさにごもっともとしか言いようがありません。林博史氏の本『戦後平和主義を問い直す』の記述

>最近のフランスの極右は、われわれは、日本の自民党に比べれば、よっぽど穏健だと言うそうです。(152ページ)

がまさにそのまま当てはまるということです。この件は以前記事にしました。現在は、たぶんもっと自民党は右翼になっているわけです。

本日の記事は、inti-solさんの記事からヒントを得ました。ありがとうございます。また上の私の文章は、一部inti-solさんの記事のコメント欄に寄せたものと同じであることをお断りしておきます。


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