以前私は、アムウェイについて書かれた(批判)本を複数読んだことがあります。昨今の行政処分のこともあり、地元の図書館で調べましたら、次の本が見つかりました。
著者の山岡俊介氏は、アムウェイから出版社ともども名誉棄損で訴えられましたが、アムウェイ側の敗訴となっています。この本自体は昔読んだことがありますが、あらためて読み直すと、興味深い下りが。
つまり1992年に東京都が、日本アムウェイほかのマルチまがいの会社を調査して、93年に企業31社に問題のある行為を具体的に指摘して、是正を強く要請したというのです(前掲書p.49.以下「前掲書」省略)。
>この調査結果は公表されているが、7社の名前は伏せられている。しかし、調査企業の規模として資本金100億円以上、年間売上1000億円以上の企業が1社含まれていることは明らかにしている。こんな大規模なマルチまがい企業は日本アムウェイ以外に存在しないから、同社が7社に含まれていることは自明(p.50)。
として、東京都生活文化局価格流通部取引指導課(名称は本のまま)による報告書が引用されています。
>調査対象事業者の会員から勧誘を受け、実際に組織に入った(元)会員7人に対し個別にその取引実態について情報提供を受け、面接調査を行った。その結果、次の事実が判明した。
〇誘因時に尋ねても要件を全く告げなかった。
〇飲みに行こうか、いい話があると電話で呼び出し、勧誘した。
〇入会に当たり本人がまったく必要としない高額な商品の購入を強要した。
〇入会には8000円、ビジネスするには20万円必要だと言った。
〇会に入って勧誘すれば大変よい暮らしが送れる、当社は凄い会社だ絶対儲かると宣伝し、勧誘した。
〇今入っていれば将来ピラミッドの上の方になれるといって勧誘した。
〇今入っていれば大きく儲かると未成年者を勧誘した。
〇商品購入資金を調達させるためサラ金からの借入を強要した。
〇虚偽の住所記載を唆した。
〇長時間、執拗に勧誘した。
〇契約意思を明示していないのに契約手続きを進めた。
〇入会費用及び商品購入代金を振り込んだ後、入会申込書及び商品購入申込書を渡した。
〇書面をその場で渡さなかった。
〇キットの購入代金を立て替えた。
〇勧誘時の話と違い、実際の活動は深夜の電話アポイントメント等だった。
〇クーリング・オフの申出に対し説得した。
〇他の人には情報を漏らさないように言った。
〇紹介先リストを50人分書いてくるように言い、記入用紙を渡した。
〇他人に紹介するには先ず自分で購入しないと駄目だと言った。(p.50~51)
あれ・・・こういうの、どっかで読んだことありますねえ。今回の消費者庁がアムウェイの勧誘として問題としたものは、次のような事例です。消費者庁のPDFより。タイトルを引用します。
> 勧誘事例
【事例1】(氏名等の明示義務に違反する行為(統括者の名称や勧誘目的の不明示)、勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘、迷惑勧誘及び概要書面の交付義務に違反する行為)
>【事例2】(氏名等の明示義務に違反する行為(勧誘目的の不明示))
>【事例3】(氏名等の明示義務に違反する行為(統括者の名称及び勧誘目的の不明示)及び勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘)
事例の詳細については、リンク先を確認してください。
これがどのように法令に問題となるかは、下記の通り。
>4 処分の原因となる事実
日本アムウェイ及び旧法に規定する勧誘者は、以下のとおり、旧法の規定に違反し、又は旧法に規定する指示対象行為に該当する行為をしており、消費者庁は、連鎖販売取引の公正及び連鎖販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。
(1)氏名等の明示義務に違反する行為(統括者の名称及び勧誘目的の不明示)(旧法第33条の2)
旧法に規定する勧誘者は、遅くとも令和3年3月以降、本件連鎖販売取引をしようとするとき、その勧誘に先立って、その相手方に対し、日本アムウェイの名称や特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨を明らかにしていない。
(2)勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘(旧法第34条第4項)旧法に規定する勧誘者は、遅くとも令和3年3月以降、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに、電話又は電磁的方法により、特定の場所への来訪を要請する方法により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、当該契約の締結について勧誘をしている。
(3)迷惑勧誘(旧法第38条第1項第3号)
旧法に規定する勧誘者は、令和3年3月、消費者が日本アムウェイの統括する一連の旧法に規定する連鎖販売業に係る連鎖販売契約を締結しない旨の意思を繰り返し明示又は黙示に表示しているにもかかわらず、消費者の意見を否定するような発言をしたり、強い口調で執ように勧誘をしたり、事前に何の説明もないまま一方的かつ不意打ち的に勧誘をしたりするなど、当該連鎖販売契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をしていた。
(4)概要書面の交付義務に違反する行為(旧法第37条第1項)
日本アムウェイは、令和3年3月以降、日本アムウェイの統括する一連の旧法に規定する連鎖販売業に係る本件商品の販売又はそのあっせんを店舗等によらないで行う個人を相手方として本件連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約を締結しようするときに、その契約を締結するまでに、日本アムウェイの旧法に規定する連鎖販売業の概要について記載した書面を交付していない。
上の、1992年における関係者の聴取と93年でのそのとりまとめといろいろ合致しますね。
>氏名等の明示義務に違反する行為(統括者の名称及び勧誘目的の不明示)(旧法第33条の2)
は、
>〇誘因時に尋ねても要件を全く告げなかった。
〇飲みに行こうか、いい話があると電話で呼び出し、勧誘した。
と合致するし、
>勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘(旧法第34条第4項)
は、そのものずばりは見当たらないと思いますが、
>迷惑勧誘(旧法第38条第1項第3号)
などは、
>〇入会には8000円、ビジネスするには20万円必要だと言った。
〇会に入って勧誘すれば大変よい暮らしが送れる、当社は凄い会社だ絶対儲かると宣伝し、勧誘した。
〇今入っていれば将来ピラミッドの上の方になれるといって勧誘した。
〇今入っていれば大きく儲かると未成年者を勧誘した。
〇商品購入資金を調達させるためサラ金からの借入を強要した。
〇虚偽の住所記載を唆した。
〇長時間、執拗に勧誘した。
〇契約意思を明示していないのに契約手続きを進めた。
〇入会費用及び商品購入代金を振り込んだ後、入会申込書及び商品購入申込書を渡した。
そのものじゃないですか。さらに、
>概要書面の交付義務に違反する行為(旧法第37条第1項)
は、
>〇契約意思を明示していないのに契約手続きを進めた。
〇入会費用及び商品購入代金を振り込んだ後、入会申込書及び商品購入申込書を渡した。
〇書面をその場で渡さなかった。
としかいいようがない。
さてさて、このような記事を私ちょっと前発表しました。
詐欺というのは、現在から過去へ逆算していけば、だれも引っかからない(が、その場での判断を余儀なくされるのが厳しい)つまりは悪質な詐欺師連中によって、世間知らずの女性が追い込まれて自殺したという話ですが、その記事でもご紹介した
>LINEで「今すぐに決定したい訳じゃなくて」と送る。だが、男は「9月1日まで入金の方はレバレッジ4倍」「今やるのを強くおすすめしております」と返す。
というのは、
>〇今入っていれば将来ピラミッドの上の方になれるといって勧誘した。
になります。さらに
>驚いたのは、投資のための金策まで男が指示していたことだ。具体的な消費者金融会社の名前を出し、「一日で終わらせな信用情報回ってまうから借りられない!」「借入理由は引っ越しで」などと具体的に説明する。
は、まさに
>〇商品購入資金を調達させるためサラ金からの借入を強要した。
じゃないですか(呆れ)。また
>穂野香さんは100万円を銀行振り込みで、50万円は男に手渡ししていた。だが、男は直接受け取った現金の受領証すら、「後で」などと言い、渡していなかった。
というのは、
>〇書面をその場で渡さなかった。
そのものです。ほかにも
>〇長時間、執拗に勧誘した。
など類似点だらけです。
つまりは、アムウェイにかぎらずとも、マルチまがいの会社のやっている営業なんて、ほとんど詐欺と紙一重だということです。この自殺した女性は、未成年ではありませんが(大学卒業したての女性)、
>〇今入っていれば大きく儲かると未成年者を勧誘した。
というのも、ほぼそれに近いのではないか。およそ世間知らずで、逃げることが苦手なタイプに見えますので。
いずれにせよやっていることなんて30年前とまるで変わらない。そしてそれは、統一協会の霊感商法などがいまだ根絶されていないというお粗末な現実ともつながるのではないか。お話にもなりません。昨日の記事のようなことです。
それなら旧統一協会のほうがずっとひどいじゃん(日本アムウェイへの行政処分について思うこと)