先日こんな記事を書きました。
けっきょくこれらの本を読めば、本多勝一氏の東洋医学の本など根本から崩壊してしまう(高橋晄正氏の著書)その記事の中で私は、本多勝一氏のめちゃくちゃな東洋医学についての主張を批判しましたが、ただあの本における本多氏の東洋医学についての見解というのは、実はほとんど私が
>S氏(≒境氏)
と表記する人物(鍼灸師である境信一氏。故人)によるものなわけです。本多氏は、それをたれ流しているにすぎません。それまたひどい話ですが、本多氏は、S氏(≒境氏)の主張を、なんら検証しないでたれ流しているのです。なお私が「S氏(≒境氏)」と表記する理由については、上の過去記事をご参照ください。
だいたい本多氏自身、上の記事でも引用しましたように、
>一方S先生に対しても注文があります。その鍼灸治療の名医(引用者注:S氏(≒境氏)は医者ではないのだから、「名医」という言い方は誤解を生みたいへんよろしくありません)ぶりには体験的に感服したものの、一般的東洋医学の中でもさらに創見を加えておられるらしいその理論は、私の西洋医学的常識が邪魔しているためか、まだよく納得するに到っておりません。ぜひともS先生ご自身でわかりやすく独自の著書をまとめ、多くの読者の前に刊行してください。それをもとにした批判・反批判をへて、さらに東洋医学が大きく発展してゆくことを期して待ちます。
と書いているくらいです。本多氏は、
>私の西洋医学的常識が邪魔しているためか
とかいらないことを書いていますが(苦笑)、つまりは
>まだよく納得するに到っておりません。
なわけで、S氏(≒境氏)の主張に対して不審なところもあるわけです。だったら、そんな人物の主張をたれ流すのはやめろと強く思いますね。取り上げるのなら、本多氏なり誰かが、S氏(≒境氏)に直接確認するなり、東洋医学以外の医療関係者らにも取材をかけて、S氏(≒境氏)の主張についての確認ほかをする必要があるでしょう。ところがこの本では、そんなことはまるでしていない(その後もしていない)わけです。これはいったいどういうことなんですかね?
前記事でも引用しました
>疑似科学の特徴として、反証不可能性の他に証明責任の転嫁や検証への消極的態度を挙げている。
(引用は、Wikipedia「反証可能性」より)ということだと指摘されても仕方ないんじゃないんですかね。けっきょくは、検証したらかえって藪蛇になるという考えが本多氏にあったとしか私には思えません。だったら、繰り返しますが、こんな本出版すべきでありませんね。これは本多氏の著作であり、本多氏が内容に責任を持つ本なわけですから。本多氏がプロデューサーになってS氏(≒境氏)が本を出せばいいのですが、たぶんそれは、さまざまな事情で困難だったのでしょうね。それなら、S氏(≒境氏)は、私が書いたことを再掲すれば、
>詐欺師やコピーライター、アジテーター、はったり屋、詭弁家
ではあっても、まともな東洋医学の関係者ではないように思いますね。これがS氏(≒境氏)に対する名誉棄損になるというのであれば、S氏(≒境氏)についてのさまざまな情報を開示してくれないと、とても私は、この意見を引っ込めるわけにはいきません。
それで前に私が読んだ『トンデモ本の世界』なんかでもそう思うのですが、どうも世の中ほかで一定の評価なり立場がある人間がトンデモなことを主張する場合、その多くは、どっかのトンデモな人間の話をそのまま受け入れる、傾倒する、なぜか惚れ込んじゃう、という傾向がありそうですね。前に私がとりあげた半藤一利氏のハニートラップ与太も同じじゃないですか。
「ハニートラップ」なんてことで、そのような歴史の話を解釈するのはよろしくない(半藤一利氏って、こんなトンデモだったのという気がする)(上) 「ハニートラップ」なんてことで、そのような歴史の話を解釈するのはよろしくない(半藤一利氏って、こんなトンデモだったのという気がする)(下) やっぱり半藤一利氏ってトンデモじゃんとあらためて思った(追記あり)半藤氏の珍論の論拠は、
>某海軍士官がポロッと漏らしたんです。「ハニー・トラップだよ」と。つまりドイツに留学をしたり、駐在していた海軍士官に、ナチスは女性を当てがったと言うんです。
>それを聞いてから、ドイツ留学やドイツ駐在をした人に次から次へと尋ねたところ、半分以上は否定しましたけれど、三分の一くらいは認めましたね。どうやらアメリカとイギリスはそういうことはなかったようですがね。親米英か親独か。あるときからなだれを打って親独になった裏には、そんな情けない事情もあったんです。
>ところがあるとき、海軍中佐だった千早正隆氏があっさり真相を語ってくれたんですね。つまり、ドイツに行った海軍士官はみんな女をあてがわれて、それで骨抜きにされたんですよ。
なんていう実に信憑性の低い話でしかないわけです(苦笑)。半藤氏が本気でそんなことを事実だと考えているのなら、それ関係者がご存命のうちに徹底取材して本でも出せばいいでしょうに。論文に書いてもいい。しかし、彼は、理由はともかくそんなことをしなかったわけです。これも、突っ込まれたらやばいという懸念が半藤氏になかったとは、私には思えません。そして彼の論拠は、つまりは、元海軍中佐・千早正隆氏の話でしかないわけです。千早氏がそんなことをほんとに話した(話したとして、どういうニュアンスでいったのか)かも怪しいものがありますが、そこから話を始めたとしても相当な取材をしないと話は確認できません。こんな話は、どっちみち関係者がみな亡くなってからするようなものでもないでしょう。まったくやることが、「死人に口なし」の典型です(苦笑)。無責任きわまりない。
そして『トンデモ本の世界』に登場するトンデモさんの一部にも、そういう人たちがいますね。たとえばかつて京都で弁護士をしていたという林俊平氏と奥さんの和子さんは、『空中携挙』という本の中で、宇野正美の講演テープを聞かされて(なぜか)それにはまってしまい、キリスト教根本主義に入れ込んでしまいました。そっちの方面の活動家になってしまったようです。
また、
>山形県出身。東京工業大学電気工学科卒業。工学博士。東京工業大学・ハワイ大学・電気通信大学・千葉工業大学・東海大学の教授を歴任。電子情報通信学会名誉会員、IEEEフェロー。紫綬褒章、勲三等瑞宝章受章。電波工学の世界的権威として知られる。電気通信における雑音について、情報理論の提唱をすぐに取り入れた研究成果などがある。
という華麗な経歴を持つ関秀男博士は、いろいろな奇人変人のほざく無責任な与太を片端から信じて、それを本で記しています。まさにまともではない。
実は私も、たまたま地元の公立図書館に、関博士の上の本(『トンデモ本の世界』にとりあげられている本)が収蔵されていたので読んでみたのですが、内容のあまりのすさまじさに絶句した記憶があります。なるほど、トンデモとはこのようなものなのだと深く納得(苦笑)しました。
ほかにもいろいろなトンデモさんの話を片端から信じ込んじゃう太田竜などいろいろな人たちが登場します。もっとも太田竜は、世間からまともな人間とはみなされていないか。
さらには、これは上の本にでてくるわけではありませんし、詳細は明日以降記事を書きますが、幼稚な真珠湾陰謀論の本を真に受けちゃって、それに全面的に依拠した発言をしてしまった国際政治学者や有名ジャーナリストもいるわけです。
それにしても、本多勝一氏のS氏(≒境氏)といい、半藤一利氏の千早正隆氏、林俊平氏の宇野正美、関博士や太田竜らの複数のトンデモな知人といい、なんでこういう人たちは、このような変な連中を全面的に信用するんですかね(笑)。本多氏などはっきり、S氏(≒境氏)の主張は
>まだよく納得するに到っておりません
と書いている。難しいこと(ていうか、ワケのわからんこと)をまくしたてて周囲を煙に巻くなんて、典型的な詐欺師の手口じゃないかと思うんですが、本多氏に「その人怪しいんじゃないんですか」って言っても、たぶん全力を挙げてS氏(≒境氏)をかばうんでしょうね(笑)。でなければ激怒するか無視するかではないか。忠告してくれる金融機関の人間や警官、親切な人に対して激怒する振り込め詐欺の被害者みたいなものです。難解だったり根拠不明な話をまくしたてて、お人よしの女性から金を巻き上げたクズ詐欺師連中の話は、下の記事を参照してください。
詐欺というのは、現在から過去へ逆算していけば、だれも引っかからない(が、その場での判断を余儀なくされるのが厳しい)(追記あり)で、そうでなくても「その主張、ほかで検証したほうがいいんじゃないんですか」ていどのことも、たぶん本多氏は受け入れないんでしょうね。これも、「せめて息子さん(お孫さんほか)に電話を入れたらいいんじゃないんですか」ていどの説得にも耳を貸さない人たちに酷似しています。本多氏がそんなことをするくらいの見識があれば、あんなひどい本を書きはしない。本多氏 は、『はるかなる東洋医学へ』の中で、
>U子さん(引用者注:本多氏の義理の娘さん)場合について瞠目していた私は、自分自身の直接体験によって、東洋医学あるいはS先生にすっかり参ってしまった―といいたいところだが、すでに人生五十数年、還暦の近づいた男はこれまでの多くの体験からすべてに疑い深くなっている。S先生の治療ぶりは九五パーセントくらい認めざるを得ないと思いながらも、五パーセントくらいは保留して、相棒(引用者注:本多氏の奥さん)などに冗談交じりに「ことによると天才的名医かも」と言ったりしていた。(文庫本p.47~48 引用中青字は、原文傍点)
などと書いていますが、そんな批判的精神この本のどこにも、本多氏にはありませんよ(苦笑)。でなければ、S氏(≒境氏)の世迷言など、無批判にたれ流しはしないでしょう。こんな枕詞を並べてどうする(笑)。こんなのは、オカルトについて批判的なことを言った後おもいっきりオカルト話を繰り広げる連中と変わりがない。だいたい
>天才的名医
なんてのは、そもそもS氏(≒境氏)は、医者でなく鍼灸師なのだから、読者にあらぬ誤解を生じさせるきわめてよろしくない表現だし、
>すべてに疑い深くなっている
>五パーセントくらいは保留
というのなら、この本が発売された後繰り広げられていたさまざまな批判にも対応したらどうか。上にも書いたように、本多氏に、S氏(≒境氏)へのまともな懐疑精神、批判的精神、検証をしようとする精神などというものはまるで見出せません(呆れ)。これでは、ジョージ・アダムスキー のような病的うそつき野郎にやたら傾倒する連中と変わらない。
しかし本多氏の場合、問題は医療にかかわることですから、より問題ですね。アダムスキーが実際にUFOに乗ったかどうかなんて話は、病的うそつきの戯言ですみますが(それを法で規制するというわけにもいかんでしょう)、本多氏の本を読んだ人たちがS氏(≒境氏)を訪れて医療事故のたぐいが起きたらどうするのか。そうなった場合、本多氏に法的な責任はなくても道義的な責任まで免責されるとは言えなくないか。本多氏が、S氏(≒境氏)の正体を隠している、あるいはあいまいにしている背景には、そういったことを逃げる思惑がありませんかね。
ところで、前記事(けっきょくこれらの本を読めば、本多勝一氏の東洋医学の本など根本から崩壊してしまう(高橋晄正氏の著書))で私がご紹介したサイト
(なおこのサイトは、スマートフォンですと文字化けするようですが、PCでしたら普通に閲覧できると思います)からちょっと引用したいと思います。
>信じたいと思うことを提示してくれる。一部の人たちにとっては、「信じたい」と「信じる」がほぼイコールなのではないか。特にいわゆる船井系(船井幸雄氏が支持するもの。波動・EMなど)を受け入れる人たちには(船井氏自身も含め)そのような傾向が強いと思える
>自説の誤りを指摘されたときに、それにきちんと対応できないとニセ科学の道にはいる
>ニセ科学研究者(および強固な信奉者)は説得できるか:これまでに見聞したかぎりでは、残念ながらニセ科学研究者も信奉者も説得はできない。 ニセ科学批判は、まだニセ科学に道に踏み込んでいない人々への教育のためと考えるべきなのだろう
どれも強く納得できます。失礼ながら、本多氏も、他人から何を言われようと、S氏(≒境氏)への絶対的な傾倒はひっこめないでしょうね。
でも本多氏って、日本人は論理と倫理に弱いみたいなことを言っていませんでしたっけ。「倫理」はともかく、こんな与太を信じ込んでそこら中に拡散している人物がそんなことを言うなんて、ほぼ「悪い冗談」のレベルじゃないですかね。非常に失礼ですが。
いずれにせよ、他人に傾倒するにしても他人の意見を紹介しているだけで自分は関係ないなんて言い訳は通用しませんからね。島田裕巳だって、オウム真理教に関してのトラブルで職(日本女子大教授)を追われる始末です。『週刊金曜日』は、かつて船瀬俊介のようなトンデモな人物をやたら重用していたかと思いますが(昨今は知りません)、それだって船瀬だけ批判していればいいというものでもないでしょう。『週刊金曜日』も、相当に船瀬に依存していたんじゃないんですかね。
だいぶ記事が長くなってしまいました。『はるかな東洋医学へ』については、また個別の記述の批判をしたいと思いますので、乞うご期待。