しつこいって? しつこいの私大好き。
過日「「経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ」の実例」と題して、ノルウェーとオランダ両政府の中国政府とチベット亡命政府(ダライ・ラマ)への対応をご紹介しました。で、これは言うまでもなく、中国とチベットの関係に限られる話ではありません。それこそ日本国内だってそうだし、あなたや私の家庭でも同じです。金銭が豊かなら、あんな夫(奥さん)と離婚するとか、一人前になったら家を出るとか、けっきょくはぜんぶ金の話でしょう。金がなければ嫌な夫(奥さん)とも離婚は難しくなるし、親の援助なくして働けるようになるまでは、子どものほうも親からいろいろと口を出される状況が強くなります。で、そこで経済的に不利な側(夫婦なら、その多くは奥さん)が離婚すれば、経済的にもひどい苦労をすることになるわけです。
というわけで今回は、中国とチベットと欧州の国ぐにの話ばかり書いていてもつまらないので、日本の自治体の話をします。事実を紹介することは、「シニシズム」とか一方を支持することとはちがいます(これは安倍晋三への態度もご同様)、なんてMukke氏みたいな、チベットやダライ・ラマをかばう(と、この人が主観的に考える状況であれば)ためなら、どんな愚にもつかない詭弁やでたらめや言いがかりでもほざきかねない人間に話をしたってしょうがないか。呆れた人間です。
Mukke氏なんかどうでもいいですが、ではいきますよ。まずは秋田県の事例から。産経新聞の記事です。内容自体は愚にもつかないトンデモ記事ですが、しかしこういう記事のアプローチはたぶん産経新聞以外はとらないと思うので、そういう意味では非常に参考になる興味深い記事です。産経新聞のねらいとはまた異なりますが。
>韓国への修学旅行見直さず 秋田県教育長「不安を払拭したい」
2014.5.23 13:35 [旅・観光]今年秋に韓国への修学旅行を予定していた秋田県立能代松陽高(能代市)が旅客船セウォル号沈没事故を受けて韓国行きを中止した問題で、米田進県教育長は23日、他の県立高については実施する意向を示した。
県議会自民党会派との協議会で北林丈正氏の質問に答えた。北林氏は「風評被害ではないが、説明が必要だ。学校の判断に任せるのではなく、県として対応すべきではないか」と韓国への修学旅行の継続を求めた。
米田教育長は「おっしゃる通りで、安全対策や情報収集で不安を払拭し、県の(旅行費)補助事業についてもPRしたい」と韓国行きを見直さない考えを示した。県教委によると、今年度は県立高3校が韓国への修学旅行を計画している。
県は大韓航空の秋田−ソウル便維持のために韓国への修学旅行を推進しているが、交通機関への不安のほか、反日国への修学旅行は適切ではないとの批判が出ている。
>反日国
なんてのを、記事で堂々と記述する産経のトンデモぶりには呆れますが、それはともかく私がこの記事で注目したいのは、
>県は大韓航空の秋田−ソウル便維持のために韓国への修学旅行を推進しているが
というところと、
>県議会自民党会派との協議会で北林丈正氏の質問に答えた。
です。つまりは、秋田県が修学旅行の高校生を乗せることによって秋田⇔ソウル便を維持しようと考えていること、さらには自民党の県議が
>韓国への修学旅行の継続を求めた。
という立場であることです。
高校生の修学旅行で空路の維持を図る、という思惑の妥当性はさておき、つまりはそういう手段を取ってでもなんとか乗客数を維持したいと秋田県は考えているということです。これが重要なことです。
少なくとも私の知る限り、地方自治体については、安倍政権とか産経新聞よりは、中国とか韓国とかとの関係を維持・発展することにとても熱心なところが多いですね。これは当たり前で、地方自治体というところは外務省と防衛省以外はすべて機能があるなんていわれますが、こと対外関係という意味合いでいえば、地方自治体が海外と接触を持つということはその多くがビジネス絡みであるわけで、そうである以上ビジネスとの関係のほうが「反日」なんてことより優先順位が高いのは当たり前でしょう。まさに私の言う「経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ」ということです。自民党の県議さんが、韓国への修学旅行の継続に積極的なことがその表れです。
ではほかにも。東京とかの大きな都道府県の話を書いても面白くないので、規模の大きくない県の事例を紹介しましょう。
平成26年4月7日(月)上海市内のホテルで、群馬県上海事務所(公益財団法人群馬県産業支援機構上海代表処)の開所一周年記念式典を開催しました。式典には、福田康夫群馬県日本中国友好協会最高顧問・元内閣総理大臣、祝偉敏上海市人民政府外事弁公室副主任、小原雅博在上海日本国総領事、久保田順一郎群馬県議会議長らが来賓として出席した他、上海市政府関係者、日本政府関係者、現地の旅行社・貿易会社、本県からの進出企業、海外ぐんまサポーターズ(県人会)の皆様など約100名が参加しました。
主催者挨拶に立った大澤正明知事は、参加者へこれまでの上海事務所の運営に対するお礼を述べるとともに、今後の更なる協力をお願いしました。来賓あいさつの中で福田元総理は、パウダースノーや温泉、おいしい食べ物、縁起だるまなどを紹介し、本県の魅力をアピールしました。
群馬県というのは有名な保守的な県ですし(ただし野党の政治家でも知名度の高い人は出ています)、記事にも出てくる大澤知事という人は、無所属ではありますが自民党の公認を受けて立候補したくらいで、他県の知事より自民色は非常に強い知事です。なにしろWikipediaにも
>全国唯一の政党公認知事となる
とあるくらいです。
そういう人だって、このような場に登場して
>本県の魅力をアピール
するわけです。群馬県の自民党の間で、大澤知事のこの行動がどう評価されているのか知りませんが、まあおおむね肯定されているんじゃないですかね。たぶん「中国なんか」と陰口が叩かれまくり、っていうことはないでしょう。また逆に叩かれたとしても、大澤さんのお考えでは、ご自身が顔を出して挨拶することが、群馬県にとってプラスになると判断しているんでしょうね、きっと。これを「経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ」と言わずしてなんというでしょうか。まさにそのものです。
そしてこれは、この間記事にした佐渡のホテルが中国人の受け入れに積極的だということ、対馬の観光業者が韓国人受け入れに熱心なことに通じる話です。いろいろ産経は佐渡のやり方に言いがかりをつけていましたが、佐渡に日本人が来ない以上来てくれる中国人にいろいろ対応していくのは当然でしょう。まったくもって当たり前の話です。
個人的には、自治体の人たち(行政ばかりでなく議員も入れてです)が産経のいう「反日」の他国との付き合いに積極的なのはいいことだと思います。これで産経新聞のような態度を取るようになったら、マジでけっこうまずい事態になると思います。
今回の記事も、bogus-simotukareさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。